8月10日に甲子園で記者会見を開いた広陵・堀正和校長(C)産経新聞社 第107回全国高校野球選手権(甲子園)を大会途中で…

8月10日に甲子園で記者会見を開いた広陵・堀正和校長(C)産経新聞社
第107回全国高校野球選手権(甲子園)を大会途中で辞退した広陵(広島)が8月16日、学校の公式サイトを更新し、「文春オンライン」の報道に対する声明と、文藝春秋社への回答概要を公表した。16日付の「文春オンライン」は「部内暴力の“悪しき伝統”を放置したのは中井監督」と題し、2015年当時の元部員A氏のインタビューを掲載。これに対して、学校側は「本校の回答は有料記事の要約にとどまっている」として、誤解回避のため一次資料を開示する対応に踏み切った。
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学校側は、A氏が主張する「2015年秋の集団暴行」は「事実ではない」とした。説明では、2015年9月18日夜の自主練習中、硬式野球部室の鉄製ドアが勢いよく閉まり、A氏の頭部に強く当たった「偶発的な事故」だったという。
連絡を受けたコーチと外部トレーナーが救急搬送に同乗。近隣病院での検査で異常はなかったが、A氏が上肢や下肢の動作不良を訴えたため別病院でも検査を受け、最終的に三つ目の病院でCT・MRIを含む精密検査を実施。いずれも異常は確認されず、経過観察のため入院となった。
この過程でコーチらはA氏本人から「部室のドアで頭を打った」との説明を受けており、現場を目撃した部員もいたとする。原因は「ドアクローザーの不具合」で、当日中に用務員が応急調整、約2年後には安全性向上のためドアを交換した。学校は当時の用務員への聞き取りや記録確認を改めて行い、「事実経過に疑義はない」と断じた。
また、報道にある「暗い部室で上級生が正座を命じ、スパイクで暴行」との具体的な暴力シーンも「把握していない」と全面否定。暴力行為やいじめがないよう厳しく指導しており、A氏からもそのような申告はなかったとする。事故を暴力事案と認識していなかったため、高野連への報告義務も生じないと説明した。
さらに、中井哲之監督による「隠蔽」疑惑にも反論。監督は入院先を訪ね、「少しでも早く良くなって野球を頑張ろう」と声をかけたが、暴力を前提とするやり取りや口止めは「ない」と強調。同日には野球部長らもA氏と父親に謝罪しており、「隠蔽の動機は存在しない」とした。
一方で学校は、すでに認定・公表している「部員間の暴力を伴う不適切行為」については「改めて調査」を予定。硬式野球部の指導体制を抜本的に見直す方針で、第三者委員会などによる調査には全面協力すると表明した。
大会辞退の衝撃が冷めやらぬ中、渦中の名門は真っ向から反論。最終的な事実認定は、現在進行中の第三者委員会の調査結果に委ねられる。真相の全容が明らかになるまで、学校、関係者、そして世論はその報告を待つことになる。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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