(16日、第107回全国高校野球選手権大会3回戦 山梨学院14―0岡山学芸館)■岡山学芸館・吉井翔悟投手 先頭に立つの…

 (16日、第107回全国高校野球選手権大会3回戦 山梨学院14―0岡山学芸館)

■岡山学芸館・吉井翔悟投手

 先頭に立つのは得意ではなかった。

 那覇の国際通りで、3年生5人でタコライスを食べた。3月の沖縄遠征最終日だった。店を出ると、倒れて意識のない高齢女性がいた。

 副主将の前田蓮斗が陣頭指揮をとった。スマホで「頭打った高齢者 対処法」と調べ、通報、心臓マッサージ、脈の確認と即座に役を割り振る。

 自身はAED(自動体外式除細動器)を取ってくるように言われた。居酒屋などを回り、コンビニで見つけて持ち寄ると、ちょうど救急車が到着するところだった。那覇空港で先生から「助かった」と聞いた。

 兵庫から岡山に来た。人見知りだ。友人ができるか不安だった。同郷で一緒に入部した中尾文哉は社交的。後ろについていくようにして、輪に入っていった。

 投手としても、中尾によれば「先発でガツガツいくわけじゃなく、青中陽希(はるき)の後から行ってさりげなく抑えるのが彼らしさ」だった。

 一度、先発をしたがうまくいかなかった。4月の春季県大会準々決勝だった。その日は朝からそのことが頭をもたげ1人で過ごし、逃げ腰になり初回に3失点。敗れた。

 そのとき以来の先発だった。相手は優勝候補。仲間が朝から寄り添い、「緊張するのは当たり前」と声をかけてくれた。腹をくくった。

 「全員体がごつい。でも、びびったら負け」。投手陣の先頭として、堂々とストライク先行で投げ込んだ。4回を投げ、毎回走者を背負いながら2失点と粘った。重圧に勝ち、役割を果たした。昨日までの自分を超えた。(内田快)