日本サッカー界最強のFWとして知られた、釜本邦茂さんが亡くなった。多くの人々が、不世出のサッカー選手の死を悼んだが、蹴…
日本サッカー界最強のFWとして知られた、釜本邦茂さんが亡くなった。多くの人々が、不世出のサッカー選手の死を悼んだが、蹴球放浪家・後藤健生もそうしたひとりだ。今回は、尊敬していた釜本さんの母校を訪ねたときのエピソードを明かす。
■夜行バスは「絶好のトレーニング」
「蹴球放浪記」をいつもお読みいただいている方はご承知のように、僕は日頃から高速バス(夜行バス)を愛用しています。
最大の理由はもちろん料金(運賃)が安いからです(なにしろ、新幹線の3分の1程度なのですから……)が、「長距離移動に慣れておくこと」も高速バスを利用する大きなメリットです。
もちろん身体的な意味でも慣れておくことが大事ですが、最も大事なのはメンタル面です。つまり、あまり遠出をしないで暮らしているとついつい“出不精”になってしまうのと同じで、楽な近距離移動だけしかしないでいると遠距離移動が億劫になってしまいます。
それを防ぐためには、夜行バスは絶好のトレーニングになるというわけです。
南米大陸までの36時間に及ぶフライトとか、20時間もかかるバス移動……。そうしたことに尻込みしていては、「放浪家」は務まりません。
2020年に新型コロナウイルス感染症のパンデミックが始まって海外旅行ができない時期がありましたが、その間、僕は高速バスと格安航空会社を駆使して、それまで以上に国内旅行に行っていました。地方でやっている、小さな大会を求めて移動を続けました。
■問題は「その後の時間の過ごし方」
ただ、夜行バスでの移動には一つ大きな問題があります。早朝に目的地に着いてしまうので、その後の時間をどう過ごすのか……。それが大きな問題なのです。
ホテルを予約してあっても、朝ではチェックインさせてくれるはずもありません。ホテルに入れる夕方まで、あるいは試合が始まる時間まで、どこで、どう過ごせばいいのでしょうか?
一つは、どこかで休息を取る方法です。
早朝に目的地に着いて疲労が大きい場合は僕も休みます。
今ではネットカフェという便利な施設が発達していて、とりあえず個室でひと眠りすることができますし、WiFi完備なのでメールチェックもできますし、コーヒーを飲んだり、軽食をとったり、シャワーを浴びたりできます。
ここで3時間くらい休めばもう元気いっぱい街を歩くことができます。
初めての街だったら、中心街を歩いて観光してから、ゆっくりと昼飯を食べて、なんなら地元のお酒をいただいたりすることもできます。
いずれにしても、「放浪」なのですから、ネットカフェは早めに切り上げて街を歩きましょう。元気だったら、ネットカフェではなく、その辺の喫茶店で朝食をとってもいいでしょう。その土地の「モーニング」の文化に触れられます。
■ピッチの光景が「天国」のスタジアム
2020年の12月のことですが、京都に朝早く着いたことがあります。
京都府亀岡市、JR山陰本線(嵯峨野線)亀岡駅前に「サンガスタジアム by KYOCERA」が完成したのが2020年の1月。そのスタジアムを見たいのでやってきたのです。
このスタジアムでは女子代表や皇后杯、あるいはオリンピック代表の試合が行われたので、僕は何度も訪れています。
亀岡駅の目の前というアクセスの良さも素晴らしいですが、僕にとっては2階最前列の記者席から見るピッチの光景が天国のように感じられます。ピッチまでの距離が近く、しかも俯瞰的に見下ろせるので、こんなに試合が見やすいスタジアムはほかにはありません。
さて、2020年12月の事です。サンガスタジアムでの皇后杯の準決勝の試合開始は15時でした。そこで、午前中は京都市内をブラつくことにしたのです。
亀岡方面に行くには、山陰本線に乗って西北方向に向かいます。途中には嵐山のような観光地もあります。
そこで、僕はまずそちらの方向に向かうことにしました。どうやって移動するのか……。これは、「嵐電(らんでん)」一択です。正式名称は「京福電気鉄道嵐山本線」。都心の四条大宮から嵐山を結ぶ電車で、一部が道路内を走る併用軌道になっています。
庶民的でとても良い雰囲気です。
僕はまず、太秦広隆寺駅で降りて広隆寺を参観しました。嵐電は、広隆寺の山門の真ん前を通っています。
広隆寺は推古天皇の時代の7世紀初めに創建されたという、聖徳太子信仰の中心になっているお寺で、国宝の弥勒菩薩半跏像で有名です。
朝早く訪れたためか、観光客もまばらで、ゆっくりと境内を歩き、弥勒菩薩像を拝観することができました。