(15日、第107回全国高校野球選手権大会2回戦 東洋大姫路8―4花巻東) 拍手に包まれて、東洋大姫路の阪下漣がマウン…

 (15日、第107回全国高校野球選手権大会2回戦 東洋大姫路8―4花巻東)

 拍手に包まれて、東洋大姫路の阪下漣がマウンドに上がった。九回無死二塁、ここまで1回戦から1人で投げてきた木下鷹大(ようた)と交代した。

 「甲子園に連れてきてくれた木下を助けるピッチングをこの夏はしたかった」

 阪下は世代屈指の右腕と言われてきた。昨秋の近畿大会優勝の原動力となり、チームを選抜大会出場に導いた。選抜大会の初戦でも先発したが1回を投げたところで降板。右ひじの靱帯(じんたい)を痛めた。

 「けがをしたときから、みんなが『ゆっくり治せ』と声をかけてくれた」。6週間、球を投げないところから再スタートした。兵庫大会はメンバーに入ったが登板はなかった。代わりに大車輪の活躍を見せ、決勝も完投したのが木下だった。

 戻ってきた甲子園のマウンドで足が震えた。後ろを見ると遊撃手の高畑知季(かずき)や二塁手の渡辺拓雲(たくも)が口を大きく動かしているのが見えた。「観客の声で何を言っているかはわからなかったが、何かを伝えようという思いは伝わった」。投球練習から球が定まらなかったが、捕手の桑原大礼(おおら)が「真ん中でいいよ」と声をかけてくれた。

 140キロ前後の直球とスライダーのコンビネーションで2者連続で三振を奪うと、最後は遊ゴロ。11球で九回をしめた。

 5カ月ぶりの実戦復帰を無事に終え、「ほっとした」。そして、「自分が日本一のラストピースになりたい」。渡辺から渡されたウィニングボールを握りながら言った。(内田快)