第107回全国高校野球選手権大会(朝日新聞社、日本高校野球連盟主催)の大会第8日(13日)の2回戦で、健大高崎(群馬)…
第107回全国高校野球選手権大会(朝日新聞社、日本高校野球連盟主催)の大会第8日(13日)の2回戦で、健大高崎(群馬)は昨夏優勝校の京都国際に3―6で敗れた。2年連続5回目の出場で、初優勝をめざしたが、惜しくも初戦敗退。それでも昨年春から4季連続となった甲子園で躍動した。健大高崎の戦いぶりを振り返る。
今夏の健大高崎は「投手王国」と呼ばれた。20人の登録選手に投手は6人。156キロの速球を誇る全国屈指の右腕・石垣元気(3年)、今春の選抜でも好投した技巧派の左腕・下重賢慎(3年)、昨春の選抜大会優勝投手で左ひじの内側側副靱帯(じんたい)再建術(トミー・ジョン手術)から1年ぶりに復帰した左腕・佐藤龍月(りゅうが)(3年)ら注目投手がそろった。
京都国際戦では下重、山田遼太(3年)、佐藤、石垣のリレー。試合後、青柳博文監督は「下重は試合をつくれる良さがある。佐藤の球威で押し、石垣で最後を締める」と継投の狙いを説明。「延長タイブレークとなることも考えていた。だが序盤の失点が大きかった」「後手後手に回ってしまった」と話した。
健大高崎は三回、足を絡めた「機動破壊」と「強打」の片鱗(へんりん)を見せて一時逆転するが、その後は無得点に抑えられた。「前半は集中してよくできていたが、後半は点差をつけられて雑になった」と青柳監督は振り返る。
チェンジアップを駆使する京都国際の左の好投手・西村一毅(3年)はこの日絶好調で、健大高崎打線は4安打に抑えられた。唯一の適時打を放った小堀弘晴(3年)は「落ちる球と、直球の軌道からそのまま逃げるような球の2種類のチェンジアップを使い分けていて、見極めが難しかった」と話した。
今年のチームについて加藤大成主将(3年)は「昨年のようなスター選手は少ないが、チーム力の高さで勝負する」と話していた。出場選手のほかにも、様々な個性のある選手たちがいた。
三塁コーチの高須賀天丸(そらまる)(3年)は判断力を磨いて走塁を助け、明るい人柄で選手を鼓舞した。記録員としてベンチ入りした学生コーチの星野乙颯(いっさ)(3年)は群馬県沼田市出身。1年生の頃にけがで野球ができなくなってからもノッカーや練習補助を務めて選手を支え続けた。
そして選手たちが口々に言うのは、「メンバー外の選手たちのために」という言葉。背番号をもらえなかった14人の3年生の選手たちは、甲子園で敗れるまで練習を補助して支え続けた。こうした団結力が、高いレベルにある群馬大会を勝ち抜く原動力になった。
4番打者の栗原朋希(3年)は「みんなが力を合わせてやってきた。メンバー外の選手のためにも、日本一になりたかった」と涙を見せた。
健大高崎は県外出身の選手が多く、北は北海道、南は沖縄と、全国各地から選手が集まる。東京都練馬区出身の佐伯幸大(3年)は「15歳で勇気を持って、知らない土地で寮生活をする選択をした選手が集まっている。群馬の透き通った空気の中で野球をして、自分たちは県民だという気持ちでここに住んで3年間を過ごしている」。
高いレベルにある健大高崎に追い付き追い越せと県内の各チームも競い合っている。9月には秋の県大会が始まる。新チームが、来春の選抜大会出場を見据えた戦いを始めている。(中沢絢乃)