(14日、第107回全国高校野球選手権2回戦 仙台育英6―2開星) 甲子園へ出発する前、100円均一ショップで白いハチ…
(14日、第107回全国高校野球選手権2回戦 仙台育英6―2開星)
甲子園へ出発する前、100円均一ショップで白いハチマキを買った。決勝進出を願って、たんまりと。「試合は最初の円陣で決まる」。開星の福島柚輝(3年)はそれをベンチ裏で頭に巻いて、活を入れる。
試合前夜は必ずスマートフォンで「勝負事 四字熟語」と調べた。相手やチームの状態を考えて、「これだ」と思うものをハチマキからはみ出そうなほど大きく書き込む。「心を一つにして勝ちたい」
昨秋まで一塁手だった。ベンチメンバーには最後まで入れなかった。どうしたらチームが盛り上がるかを、スタンドで考えるのは好きだった。そんな姿を見ていた仲間たちが「近くにいてほしい」と、自分を記録員に選んでくれた。
サポートする立場はもともと向いていた。1年生のとき、エースの松浦愛珠(あしゅ)、主将の藤江来斗との3人組で「ごみ拾いの『甲子園』」に出た。拾ったごみの質と量を競う全国大会。林に突っ走り、目立つごみをすばやく拾う藤江を見て、反対に岩場に隠れた小さなたばこの吸い殻を探した。チームが勝つための役割を見つけ、野球部にも同じ姿勢で貢献した。
この日は「剛毅果断(ごうきかだん)」とハチマキに書いた。意味は、強い意思を持って思い切って実行すること。3年前の優勝校を相手にひるまずプレーしてほしい。積極的に振り、次の塁を狙う仲間の姿は四字熟語通りだった。
敗れた後、相手ベンチに向かって一人、深々と頭を下げた。脳裏に仲間の顔が浮かんだ。「明るくて、腐るやつは一人もいなくて、家族みたいだった」。使えなかったハチマキは後輩に託す。「もう一回、ここに戻ってこい」。自分たちを表す言葉をまた、見つけてほしい。(平田瑛美)