猛暑が続く中、中国5県を主会場に行われている全国高校総体(インターハイ、30競技)では、暑さ対策が課題になっている。試…
猛暑が続く中、中国5県を主会場に行われている全国高校総体(インターハイ、30競技)では、暑さ対策が課題になっている。試合中に給水タイムを導入し、練習場には扇風機を置いている。陸上では実施方式の変更という異例の措置が取られた。全国高校体育連盟(高体連)は課題を検証し、今後の運営に生かす考えだ。(新谷諒真、原彩乃)
シャワーで冷やす
島根県美郷町のカヌー会場。今月5日、競技を終えた選手らが次々と控えテント後方にある仮設シャワーに向かい、体を冷やした。埼玉・浦和の町田慧人選手(3年)は「水辺の競技だが、日差しや水面に反射する光で暑く、 漕いでいると汗だくになる。レース後の冷たいシャワーでクールダウンできる」と話した。
暑さ対策は、開催地の実行委員会が各競技団体と調整して実施している。ソフトボールは偶数回終了時に試合を中断し、ナインや審判団が水分を補給した。屋内で行われたハンドボールは空調がない4会場でスポットクーラーを配置。陸上の3000メートル以上の長距離種目ではトラック横にミストをまく扇風機が置かれた。
タイム決勝
陸上で実施方式の変更が発表されたのは、開幕3日前だった。競技日の7月25~29日について、会場となる広島市の実行委が、気温や湿度などで算出される「暑さ指数」が「31」を超え、日本陸連の「原則中止・中断」の目安を上回る日が続くと判断したためだ。
競技時間を朝や夕方としたほか、トラック種目は800メートルまでは準決勝をやめてレース数を予選と決勝の2回に減らした。複数組で行う決勝は着順ではなく、全ての組での記録順に総合順位を決める「タイム決勝」が採用された。1500メートル以上はタイム決勝のみ。棒高跳びなどのフィールド種目は、予選の試技を原則3回から2回に減らすなどした。実行委の担当者は「通常通り競技を行えば選手を危険にさらす。命を守るための判断だった」と説明した。
選手の反応は割れた。夕方から行われた女子5000メートル競歩で優勝した田畑晴光選手(京都・西城陽、3年)は「日差しがなく、最高のコンディションで挑めた」と評価した。一方、タイム決勝のみとなった男子1500メートルの黒岩蘭太朗選手(長崎・長崎日大、3年)は4組中の1組で1着になったが総合では8位に。「暑さに弱いのでレースが1本になったのはプラスだったが、ラストで追い上げる展開が持ち味なので(決勝は通常通りの)着順の方がうれしかった」と語った。
実行委によると、陸上では選手12人や監督ら計19人に熱中症疑いの症状がみられ、選手3人が救急搬送された。全員が回復したという。
課題検討へ
高体連は、各競技で取られた対策や浮かんだ課題を集約して検証する方針だ。開催時期のあり方も議論になる可能性がある。
夏季の高校総体は、サッカーなどの例外をのぞき、大半の競技で開催地が毎年変わり、試合会場の状況も異なるため、一律の対応は難しいという。高体連は「選手や審判員ら関係者の安全を最優先に、柔軟な対応を考えていきたい」としている。