(13日、第107回全国高校野球選手権2回戦 京都国際6―3健大高崎) その左腕を仲間は、「日本一の景色を見せてくれた選…
(13日、第107回全国高校野球選手権2回戦 京都国際6―3健大高崎)
その左腕を仲間は、「日本一の景色を見せてくれた選手」と評する。左ひじのトミー・ジョン手術から348日、健大高崎の佐藤龍月(りゅうが)が、甲子園のマウンドに戻ってきた。
3―4で迎えた四回2死一、三塁の場面でのリリーフ。温かい拍手にも、感慨にひたることはない。「石垣(元気)に良い形でつなぐ」。内角への141キロ直球で詰まらせ、遊ゴロに仕留めた。
切れ味鋭いスライダーと、ピンチでの集中力。入学直後から主力となり、2年春の選抜は22回無失点の快投でチームを初優勝に導いた。が、その夏の甲子園直前に左ひじのけがが発覚した。エース離脱の危機感は仲間が成長するきっかけになった。
佐藤に代わって背番号1をつけた石垣元は「日本一になって正真正銘のエースになる」。何度もピンチを救ってくれた佐藤の姿を理想とした。この日は甲子園史上最速タイの155キロで観衆をわかせた。
下重賢慎と山田遼太は「佐藤にも石垣にもない武器を」と投球術をみがいた。石垣元がコンディション不良だった選抜は2人が好投し4強入りに貢献した。
チーム内のライバルでありながら、彼らには共通の思いがあった。「(佐藤)龍月を甲子園に連れて行く」。佐藤もまた、「夏に恩返しがしたい」とリハビリに励んだ。
昨夏の王者・京都国際の攻撃はさすがだった。一回の先取点は意表を突く4番のスクイズ。下重が今夏最多の4点を奪われると、山田はピンチを作って降板し、佐藤も五、六回に1点ずつ失った。
ただ、五回が終わって青柳博文監督から「佐藤を代えるか?」と問われた捕手の小堀弘晴は即答した。「もう1イニングいけます」と。佐藤が黙々とリハビリする姿がチームに与えてきた影響を、知っているからだ。
「不本意なピッチングで悔しい」と佐藤はうつむいた。石垣元は「このピッチャー陣が打たれたのならしょうがない」と涙はなかった。
4季連続の甲子園を支えた佐藤、石垣元らの投手陣を、青柳監督は「ここ最近のうちの歴史のすべてと言ってもいい」とたたえた。
「機動破壊」のフレーズで知られる健大高崎だが、佐藤らの足跡は「投手王国の健大高崎」として、甲子園の記憶に刻まれた。(大宮慎次朗)