(12日、第107回全国高校野球選手権2回戦 山梨学院6―2聖光学院) 遠征先や学校の駐車場で、つい探してしまう。トヨタ…
(12日、第107回全国高校野球選手権2回戦 山梨学院6―2聖光学院)
遠征先や学校の駐車場で、つい探してしまう。トヨタの車を。
聖光学院の北村理駈(りく)(3年)はトヨタ自動車の工場がある愛知県みよし市で育った。父や近所の家族も勤める同社は、海外も含めた多くの生産拠点があり、高い品質で国内トップの販売実績がある。「日本で一番ってかっこいい」。身近な存在だっただけに誇らしかった。
特に、自動車が好きというわけではない。自動車という空間がつくる時間が好きだった。
長期休暇で地元に帰ったとき、いつも父が自動車で名古屋駅まで迎えに来てくれた。父の愛車は当然、代々白いトヨタ車。家まで、1時間足らずのドライブだ。
父も、自分も、口数が多い方ではないけど、運転席と助手席に並んで座れば、自然と会話が弾んで心地良かった。投手としてAチームに入れそうなこと。試合で投げたこと。横顔しか見えなかったけど、父は笑顔だった。
聖光学院は部員が100人を超え、全国選手権は4年連続20回目の出場と県内の他校を圧倒する。2年生のときは公式戦で投げることもあったが、今夏はベンチに入れなかった。「どれだけ頑張っても、追い越せない壁がある」。強豪校との交流も多く、トップ選手のボールの質や実力に圧倒された。野球は高校で一区切りつけることにした。
部を引退したら、就職準備に入る。志望先はただ一つ、トヨタ自動車。あの時間を生み出してくれた車を、自分もつくりたい。工場で生産ラインに立つ仕事から始まり、ゆくゆくは「たくさんの人を束ねられる社員になりたい」。
自動車も、組織も、たくさんのパーツが組み合わさって動く。野球部も同じだった。最後の夏は、大所帯の一人としてアルプス席で声を上げ、「ここで一緒に戦った」。敗戦は自分の新たなスタートだけど、涙があふれて、すぐには走れそうにない。「まだ、みんなと野球がしたかった」(平田瑛美)