(11日、第107回全国高校野球選手権1回戦 東海大熊本星翔10―7北海)■北海の応援団長・清水翔貴 聞き慣れない校歌…

 (11日、第107回全国高校野球選手権1回戦 東海大熊本星翔10―7北海)

■北海の応援団長・清水翔貴

 聞き慣れない校歌が響くと、ほおに涙がつたった。北海の応援団長・清水翔貴(3年)は「本当にこれで最後か、と悔しくて」。しゃがれた声で絞り出した。

 実家は北海道南西部の田舎町、せたな町にある寺院。2年半前、親元を離れて寮に入る前日に父から授かった言葉を心に刻んだ。

 「声に調子の良しあしはない」。僧侶としていつもお経を唱える父らしいアドバイスだった。

 よく通る低い声は父と少し似ている気がする。仕事姿をまじまじと見たのは、祖母が亡くなったとき。葬儀に集まった人への説法が「すごく響いた」。誰かを思って語り続ける姿に心を揺さぶられ、涙が出た。

 中学生までは、早朝に寺の窓を一緒に開けて回り、夜は駐車場で自主練習に付き合ってもらった。高校球児だった父とは、野球の話ばかり。気になる寺の後継ぎは「継ぐためだけならやめてほしい」。そう言って、高校も送り出してくれた。

 この夏は背番号をもらえず、応援団長に立候補した。試合の状況を見て打者ごとに応援の曲を決め、先陣を切って声を張り上げた。最終回はチームで定番となっている応援曲「アゲアゲホイホイ」で「観客も味方につけたい」と大きく跳びはねた。

 打線がつながると「応援に応えるように頑張ってくれてうれしかった」。父の言葉が胸にあったからチームを思って動けた。最後の夏は、のどあめが手放せなかったけれど。(平田瑛美)