(11日、第107回全国高校野球選手権大会1回戦、東海大熊本星翔10―7北海) チームプレーに徹する2番打者の長迫夏輝…

 (11日、第107回全国高校野球選手権大会1回戦、東海大熊本星翔10―7北海)

 チームプレーに徹する2番打者の長迫夏輝選手(3年)が、東海大熊本星翔を出場4回目での甲子園初勝利に導く活躍を見せた。

 星翔には「勝ちパターン」がある。1番の福島陽奈汰選手(2年)が出塁し、長迫選手が犠打で送り、後続の打者がかえす――。「打ちたい気持ちも正直ある。だけど自分の役割は分かっているから」。その言葉通り、初回、五回といずれも福島選手を走者に置いた場面で犠打を決め、その後の得点につなげた。

 ところが同点で迎えた七回、苦しい局面に立たされた。無死満塁の好機。ベンチからはスクイズのサイン。「決めなければ」。しかし相手バッテリーに外角の変化球で大きく外された。ファールにすることもできず、三塁走者はアウト。

 一瞬、顔をゆがめた。だが心は折れなかった。「なんとしても取り返す。絶対に当てる」。野仲義高監督の笑顔にも励まされ、再び投じられた外角への変化球に今度は必死で食らいついた。

 打球は遊撃手の失策をさそい、三塁走者が生還。その後の猛攻を呼び込んだ。この回、一気に6点を挙げて試合を決めた。

 八回も先頭の福島先取が出塁。長迫選手にはベンチから4度目の犠打のサインが出た。ところが。「走るから、打て」。一塁上の福島選手が、目線と表情で伝えてきた。

 あうんの呼吸だ。「よし!」。力強くバットを振ると、左前打に。代わって3番の平仲孝輔選手(3年)が犠打を決め、追加点に結びつけた。普段からサインと異なるプレーも認められている自由な星翔らしさが生きた場面だった。

 春までは5番も打っていた。「本当は長打者なんです」。そんな自信もさらりと見せる。

 だが今夏から2番に定着し、しっかり気持ちを切り替えたという。「2回戦でもやります」と力強く話した。(伊藤隆太郎)