来年2026年に北中米で行われるワールドカップ開催まで、すでに1年を切った。世界中のサッカーファンが楽しみにしている大…
来年2026年に北中米で行われるワールドカップ開催まで、すでに1年を切った。世界中のサッカーファンが楽しみにしている大会だが、すでに問題点が浮上している。世界最高の大会にするために、クリアすべき「大問題」とは? サッカージャーナリスト大住良之が緊急提言!
■17時以降のキックオフは「半数以下」
だが、このクラブ・ワールドカップで明らかになった最も重大な問題は、キックオフの時刻だったのではないか。今大会の会場は、南はフロリダ州から北は大西洋岸のワシントン州まで広がり、気候もさまざまだったが、夏であることには変わりない。にもかかわらず、17時以降にキックオフされた試合は全試合(63試合)の半数以下の27試合。21試合が午後2時から4時キックオフの試合であり、正午キックオフの試合も15あった。
なぜ、こんなことになるのか。テレビ放映(今大会はDAZNが全放映権を取り、国によってテレビにも販売したが)の関係である。サッカーの世界的大会で最も多くの放映権収入を生むのが欧州各国。なかでも、英国、フランス、ドイツ、スペイン、イタリアといった「サッカー大国」が、サッカー放送にかける金額でも世界をリードしている。
■欧州の放送局に「高く売れる」時間帯
アメリカでの大会は、東西に会場が広がっており、西と東では3時間もの時差があって複雑だが、欧州とは5時間から9時間の時差がある。たとえば、クラブ・ワールドカップが行われたニュージャージー州イーストラザフォードのキックオフ時間が15時ということは、ロンドンでは20時(午後8時)、パリでは21時(午後)9時と、まさに「ゴールデンタイム」なのだ。
要するに、欧州の放送局に高く売ることができる時間帯にキックオフタイムを設定しているのである。だから酷暑のフロリダ、オーランドで、12時キックオフなどという「人道無視」のキックオフタイム(6月21日、C組のベンフィカ=ポルトガル×オークランド・シティ=ニュージーランド)が組まれるのである。もっともこの試合は、暑さではなく、落雷の危険で後半開始が2時間も遅れるという形になってしまったのだが…。
これまで、南北のアメリカ大陸ではワールドカップが8回開催されている。そのうち5大会は南米での開催で、ワールドカップが「テレビ時代」になった以降では、アルゼンチン(1978年大会)とブラジル(2014年大会)の2大会だけだが、季節としては「冬」にあたり、早い時刻のキックオフでも問題はなかった。
■テレビの影響をまともに受けた「3大会」
問題になったのは、北米大陸で行われた3大会、1970年と1986年のメキシコ大会、そして1994年のアメリカ大会である。1970年大会は、初めてカラーで全世界に衛星生中継された大会だった。すなわち、この3大会はすべて「テレビ時代」の大会であり、その影響をまともに受けた。
酷暑のメキシコでは、伝統的にサッカーの試合は夜に行うものだったが、1970年大会では原則的に16時(午後4時)(ロンドンでは23時、パリでは24時)のキックオフとされた。大会全32試合のおよそ3分の2、22試合が16時キックオフだった。そして日曜日の12試合は、正午(ロンドン19時、パリ20時)キックオフで行われた。
欧州ではほとんど経験することのない正午キックオフの試合は欧州のチームを苦しめたが、16時キックオフでも、欧州とはまったくレベルの違う暑さの中、欧州勢は持ち前の運動量を発揮することができなかった。この大会に向けて体力強化に力を入れたブラジルが全勝で優勝できた背景には、欧州勢の暑さとの苦闘があった。