松井はエースの髙橋とは幼なじみ。小学4年頃からバッテリーを組んでいる 写真:尾関雄一朗■“猪木顔”エースと小学生からバッ…

松井はエースの髙橋とは幼なじみ。小学4年頃からバッテリーを組んでいる 写真:尾関雄一朗
■“猪木顔”エースと小学生からバッテリー
夏の高校野球愛知大会を制し、甲子園初出場を果たした豊橋中央高校。捕手の松井蓮太朗の活躍が栄冠の原動力となった。エースの髙橋大喜地とは幼なじみで、小学4年頃からバッテリーを組み続ける。
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「小さい頃から2人で公園でキャッチボールしたり、野球の話をしたり。積み上げてきた信頼はどこのバッテリーよりも厚いです。優勝したときはコイツで良かったと思ったし、感情が込み上げてきました」(松井)
豊橋中央は今、エース髙橋の“猪木顔”が全国的な話題だ。マウンド上で髙橋は度々、故・アントニオ猪木氏の顔真似をし、己の闘魂を奮い立たせたという。テレビ中継でその表情が映り反響を呼んだ。それを受け止め、好リードで導いたのが松井である。
「髙橋は熱い性格だし、気持ちが入ってるなと感じる場面が何度もありました。自分は冷静に、髙橋をリラックスさせながら、落ち着かせることもできたので良かったです。僕自身も野球では熱いタイプなんですけどね」
■あるプロ球団は大会初戦にスカウト7人
高卒でのプロ入りを狙う松井に対して、プロ側も熱視線を注いでいる。あるセ・リーグ球団は、愛知大会の初戦をスカウト7人態勢で視察していた。各地のドラフト候補を複数人でチェックする中、視察予定の兼ね合いでそうなっただけかもしれないが、参考程度の視察でないのは明らか。評価のテーブルに乗っている可能性は高い。
豊橋中央は2003年の創部以降、過去に3人、高卒でプロ選手を輩出している。全て支配下でのドラフト指名で、萩本将光監督(18年夏まではコーチ)が育て上げた。このうち15年の谷川原健太(ソフトバンク)、20年の中川拓真(元オリックス)は捕手だ。
プロ入りした先輩捕手に松井も肩を並べる。萩本監督は「野手型の谷川原や中川に比べて、キャッチャーとしては松井が上でしょう。試合の支配力があるし、仮に打てない日でもしっかり守ることができるんです」と話し、捕手としての総合力を認める。強肩強打で、素材としての魅力も顕著だ。

甲子園でも松井のバットが火を噴くか 写真:尾関雄一朗
■監督「詰めて、詰めて、詰めてやってきた」
豊橋中央は練習量が豊富と聞く。現役時代、中京大中京の主軸打者として甲子園出場経験のある萩本監督のもと、よく鍛えられている。エース髙橋や強打の野手陣も含め、暑い中タフに戦い抜いたのは鍛錬の賜物。松井も「厳しいっちゃ厳しいですけど、自ずと結果に表れているので。精神力もついたし、耐えての結果です」とへこたれない。猛練習で力をつけた。
「萩本さん(監督)からはよく『谷川原はもっと飛ばしていた、お前はそんなもんか』とか、『中川は1秒7で二塁送球していたぞ』と言われました。プロに進んだ先輩たちと比べてもらえるのはありがたいことだし、自分もプロに行きたいならもっと頑張らないといけない。そういう気持ちになりました」
松井は今年の春以降、特に追い込んで練習した。というのも、昨年夏の大会で守備の際に味方と交錯し、右足首を骨折して以降、万全でない期間が長く続いていたからだ。患部のサポーターがとれた春から、一気に練習の強度を上げたという。萩本監督は「この3か月ほど、かなりハードにやってきた。詰めて、詰めて、詰めてやってきた」と明かす。
「萩本さんに火をつけてもらって毎日必死にやってきました。いつまでもケガを気にしていたら次に進めないので。あとはやるだけでした」(松井)
■松井の一打が勝利を呼ぶ!
強度を上げた練習で追い込み、遅れを取り戻して臨んだ愛知大会。松井は初戦の第1打席、最初のスイングで目の覚めるような右翼二塁打を放った。松井のチーム初安打をきっかけに先制し、豊橋中央は波に乗った。
「ファーストスイングの強さは練習でも意識しているし、よく褒められます。狙っていたストレートを芯でとらえられました」と本人が言えば、萩本監督も「私学4強(中京大中京や東邦など県内強豪の総称)の4番バッターでもあんな打球は打てない」とうなずいた。
愛知大会決勝では延長11回表に殊勲の2点タイムリー。松井の一打に始まり、松井の一打で戦国愛知を制した。バッテリーを組む相方が“猪木顔”で全国区になったのと同様、松井も“持っている”のは間違いない。甲子園での初戦の相手、強豪・日大三(東京)戦でも、きっと何かやってくれるはずだ。
[取材・文:尾関雄一朗]
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