(第107回全国高校野球選手権大会1回戦、静岡・聖隷クリストファー5―1茨城・明秀日立) 「いつも思いっきりがいいプレ…
(第107回全国高校野球選手権大会1回戦、静岡・聖隷クリストファー5―1茨城・明秀日立)
「いつも思いっきりがいいプレー。ひと振りで試合の流れを変えてくれる」
打席に立つ明秀日立の小川一休(3年)に、スタンドから大島康資(こうすけ)さん(同)が声援を送る。小川の耳には届かないが、気持ちは伝わっている。
横浜市出身の2人は中学生時代に同じ硬式野球チーム「横浜南ボーイズ」に所属していた。
大島さんが投手。バッテリーを組み、ともに甲子園を夢見ていた。
全日本中学野球選手権大会ジャイアンツカップにも出場したこともある。
休みには釣りにいくほどの友人。2人で相談して、進学先は明秀日立にした。
順風満帆ではなかった。大島さんは1年の夏からフォームが乱れ、球が指にかからず制球が定まらない。入学当初の右肩のけがから復帰し、焦りが原因だったという。
指導陣らは向き合ってくれたが、改善しなかった。小川も度々キャッチボールに付き合ってくれた。投げ方の変化に気づいてくれ、「感覚のズレにつながっているのでは」と助言もくれた。だが、茨城大会までに調子を上げられなかった。
小川は大島さんのことを「大好き」と隠さない。明秀日立の選手は寮生活で、2人は別部屋だが、小川は大島さんの布団に潜りこむこともある。大島さんも同じ気持ちで、茨城大会決勝で小川がマスクをかぶる姿を見て「一休のリードで投げたかった」と思った。
甲子園出場を決めた茨城大会決勝のあと。大島さんは、小川から優勝メダルをかけられ、一緒に写真撮影をした。「2人の目標をかなえてくれてありがとう」とお礼の言葉をおくった。
2人の夏は終わった。高校卒業後は別々の大学に進学する予定で、2人とも野球を続ける。そして、友情もずっと続いていく。(後藤隆之)