(9日、第107回全国高校野球選手権大会1回戦 聖隷クリストファー5―1明秀日立) 台湾で生まれ、名は「徐(じょ)上力(…
(9日、第107回全国高校野球選手権大会1回戦 聖隷クリストファー5―1明秀日立)
台湾で生まれ、名は「徐(じょ)上力(しょうり)」。日本に留学して「自分の名前がもっと好きになった」。みんなと追いかけてきた「勝利」と同じ読みだから。
台湾でも、日本の甲子園は有名だった。動画投稿サイト「YouTube」で映像を見て、きれいな黒土やスタンドの応援風景に心をつかまれた。留学生受け入れの実績がある明秀日立に入学した。
寮での共同生活が始まった。自己紹介をすると、部員たちが「まじで?」と連呼する意味が分からなかった。だって、暗記しそうなほどめくった日本語の教科書には「本当に?」の例文しか載っていないのだから。
つたない日本語で話すことが恥ずかしくて、はじめは食堂で一人、夕飯を食べた。練習中に指導者の指示が分からなかったこともある。でも、部員に頼ってみたら、分かりやすい単語を選んで教えてくれた。会話を避けていた自分を「これじゃダメだ」と奮い立たせた。
2年生になった今では流暢(りゅうちょう)に会話ができるまで上達した。控え投手として背番号11をもらったこの夏は、監督からの指示を選手に伝え、打席で打者が手放したバットを片付けた。「ここで投げたい」と思いを募らせながら。
聖隷クリストファー(静岡)との1回戦。4点を追う九回2死、打席に入っていく先輩たちの表情を目に焼き付けた。「絶対に、自分で試合を終わらせないと言っているようだった」。きっとここに来なければ分からなかった、言葉を超えた勝利への思いだった。(平田瑛美)