(9日、第107回全国高校野球選手権大会1回戦 西日本短大付4―3弘前学院聖愛) 夜の自由時間や休日になると、弘前学院聖…
(9日、第107回全国高校野球選手権大会1回戦 西日本短大付4―3弘前学院聖愛)
夜の自由時間や休日になると、弘前学院聖愛の奈良文翔(あやと)(3年)はバケツを持って寮の風呂場に向かった。手を浸すと少し熱いくらい、40度ほどのお湯をため、まだ硬いグラブをもみこむ。
新品をすぐ柔らかくするため、プロの職人たちが施す「湯もみ」を動画投稿サイトで見て学んだ。周りは「自分でやると失敗しそうで怖い」と言うけれど、小学5年生から始めてもう8年目。好きで続ける野球だから、洗濯も早起きも、グラブの型付けも、自分でやるのが当たり前になった。
内野手として、一番の相棒であるグラブのフィット感にはこだわりがある。そんな話を聞いた部員から次々と「グラブの型をつけて」と頼まれるように。「中指が強い人もいれば、小指が強い人もいる」。閉じるときのくせや好みを聞いて仕上げた。
グラブを手にはめ、うれしそうにする部員を見ると、温かい気持ちがこみあげてくる。お礼に、と学校の自動販売機で買ってもらうオレンジジュースをゆっくり飲み、たわいもない話をした。「自分も笑顔になれた、大切な時間だった」
仲間を思って時間を惜しまなかったのは、先に大きな喜びをもらっていたから。昨夏の青森大会で部員の足りないチームに派遣された。その試合には、弘前学院聖愛の部員がこぞって応援に来てくれた。「今までで一番でかい声で。もう、うれしかった」
背番号14で迎えた最後の夏。試合開始の整列後、定位置へ散っていく仲間たちのグラブを見ると、誇らしい気持ちになった。ただ、自分の出番はなく、グラブはきれいなまま。「ずっと準備していたんですけどね」。最後は悔しさが口をついた。(平田瑛美)