8月9日、J1リーグが各地で再開される。残り14試合。熾烈な戦いが続きそうだ。 とりわけ残留争いは激しくなるだろう。1…

 8月9日、J1リーグが各地で再開される。残り14試合。熾烈な戦いが続きそうだ。

 とりわけ残留争いは激しくなるだろう。18、19、20位と下位3チームが降格するが、来季はシーズン移行にともない2026年のハーフシーズンは昇格、降格がない。そのため、1シーズン半をJ2で過ごすことになり、どのクラブも例年以上に絶対回避の姿勢を強めている。

 さらに、泥沼の争いに、「オリジナル10」(Jリーグ発足当時の10クラブ)で鹿島アントラーズと並び降格がない名門、横浜F・マリノスが18位で混ざってしまい、カオス気味になっている。

 残留争いでどこが生き残るのか?



現在、最下位に沈むアルビレックス新潟の選手たち photo by Fujita Masato

 現在、下位は以下のようになっている。

12位 ファジアーノ岡山 30P
13位 清水エスパルス 30P
14位 FC東京 29P
15位 名古屋グランパス 28P
16位 東京ヴェルディ  28P
17位 湘南ベルマーレ  24P
18位 横浜F・マリノス 21P
19位 横浜FC     19P
20位 アルビレックス新潟 19P

 数字上は、11位より上のチームも残留が確定しているわけではない。それだけ、クラブの力が拮抗している。主力のひとり、ふたりが移籍やケガで離脱するだけで、どう転んでもおかしくはない状態だ。

 シーズン開幕前、筆者はweb Sportivaで以下のように下位を予想していた。

15位 湘南ベルマーレ
16位 アルビレックス新潟
17位 京都サンガF.C.
18位 清水エスパルス
19位 横浜FC
20位 ファジアーノ岡山

 予想が大きく外れたチームもあった。

 たとえば京都の躍進には頭が下がる。ラファエル・エリアス、マルコ・トゥーリオのブラジル人FWが入れ替わるようにゴール。タフで負けにくい戦いを信奉し、上位をキープしている。

 岡山、清水も予想以上に昇格クラブとして健闘を見せており、4月末までは貯金ができた。ただ、それ以降は徐々に苦しくなりつつあり、他のクラブのもたつきに助けられているだけで、気を抜くと残留争いに巻き込まれるだろう。岡山は江坂任のサッカーセンス、清水は北川航也のシューターとしての能力がカギを握るか。

 一方、横浜FMは本来なら京都の順位にいるべき伝統、規模のクラブと言える。戦力的には上位でもおかしくない。何度も監督のクビを挿げ替えるうち、パワーダウンした印象だ。

 ただ、彼らが巻き返して最終的に京都と並んでも不思議でないのが、今のJ1の実体と言える。

【戦いの中身は変わっていない横浜FM】

「リバプール戦はいい思い出にするのではなく、成長につなげられるように」

 横浜FMの主将、喜田拓也はリバプール戦後にそう語っていたが、一丸となって戦うことで生き残る道は見えてくるだろう。

「よくオーガナイズされたチームで、インテンシティは高く、集中力も高かった。ロングボールに逃げる戦いは好きじゃないが、彼らはボールを大事にしていた。残りのシーズン、十分に成功できる」

 リバプールのアルネ・スロット監督は、お世辞もあるだろうが、賞賛の言葉を送っていた。

 ただ、横浜FMは戦いの中身が大きく変化したわけではなく、舵取りの不安定さは否めない。直近の2勝1分けの結果はすべて下位が相手だった。ただ、守備は最悪の状態を脱しつつある。ケガ離脱だったジェイソン・キニョーネスが復活し、朴一圭も守護神の座に戻った。また、左利きディフェンダーの角田涼太朗も2023年以来の復帰が決まった。ケガも多く一概に"凱旋"とは言えない状況だが......。

 夏場の厳しい戦いに向け、選手層の厚さは武器だろう。新たに獲得したイスラエル代表FWディーン・デイビッドは吉凶、どちらに転んでも命運を握る。個人的には、プレーセンスを感じさせる山根陸が大化けすることを望むが......。

 現時点で、横浜FMの直接のライバルは湘南になる。

 山口智監督を中心にした湘南は、これまで何シーズンも降格候補に指名されながら生き残ってきた。その"粘り強さ"は特筆すべきものがある。しかし、シーズン半ばでGK上福元直人がアキレス腱断裂の大ケガで戦列を離れ、鈴木淳之介(→コペンハーゲン)、福田翔生(→ブレンビー)、畑大雅(→シント・トロイデン)と3人の主力が移籍した穴は埋められるのか。

 率直に言って、横浜FC、新潟の残留争いはかなり苦しいだろう。監督交代をカンフル剤にしたいところだったが、どちらも内部昇格の人事を決断。これで浮上のきっかけをつかむのは現実的に難しい。

 横浜FCは左ウィングバックの新保海鈴が出色のキックで異彩を放っているが、なかなか勝利に結びついていない。かつてジュビロ磐田やFC東京で活躍した34歳のアダイウトンをブラジル2部から補強し、どこまで巻き返せるか。

 新潟は6月半ばに横浜FMに勝利したあと、リーグ戦は5連敗と、監督交代後も出口が見えない(天皇杯では東洋大に敗れ、3回戦敗退)。今年7月、太田修介(→湘南)、稲村隼翔(→セルティック)、宮本英治(→岡山)と主力を放出し、植村洋斗(←ジュビロ磐田)、島村拓弥(←柏レイソル)、舩木翔(←セレッソ大阪)、白井永地(←柏)、小原基樹(←サンフレッチェ広島)、FWアブデルラフマン・ブーダ・サイディ(←ハンマルビー)、マテウスモラエス(←マリンガFC)と入れ替えた起死回生の策は奏功するか。

 J1はヴィッセル神戸が首位に立つが、彼らも序盤は下位に低迷していた。戦力の高さが出て浮上した格好だが、上位から下位まで差がない証左だろう。

「何が起きてもおかしくない」

 それが現状で、残留争いはスリルのあるものになりそうだ。