試合では応援団長、練習ではブルペン捕手、練習後はグラブ修理も。そんな「三刀流」で、日大山形の小鷹祐貴さん(3年)は、チ…

 試合では応援団長、練習ではブルペン捕手、練習後はグラブ修理も。そんな「三刀流」で、日大山形の小鷹祐貴さん(3年)は、チームの縁の下の力持ちになっている。甲子園を夢見てきたが、ベンチには入れなかった。それでも「選手を支えることに、やりがいを感じています。むしろ、新しく気づくこともありました」と前を向く。

 出身は秋田県の由利本荘市。小学4年のとき、夏の甲子園の日大山形の試合をテレビで見た。明徳義塾(高知)を相手に延長十二回まで奮闘し、3―6で敗れたものの、決してあきらめずに戦う姿に心を動かされた。

 「泥臭く粘る。僕の理想とする野球だ」。県境を越えて入部する決意をした。

 日大山形の男子部員は75人。ほとんどが推薦入学で、スポーツコースに所属している。小鷹さんは一般入試で進学コースに入り、文武両道で正捕手をめざした。

 山形大会の前には、ベンチ入り候補のメンバー28人に選ばれた。だが競争が激しく、大会では選手20人の中には入れなかった。

 悔しくて、何も考えられなかった。しかし、ベンチから外れた仲間に「まだ夏は終わってないぞ」と励まされ、気持ちを切り替えた。「チームのために、できることをやっていこう」

 まず立候補したのは、部内の応援団長。「スタンドから、選手に力を与えたい」と、太鼓をたたく役に名乗り出た。「打ってくれ!」と願いを込めて強く打ち、太鼓の皮が破れたこともある。

 投手陣の自主練習では、ブルペン捕手を買って出た。捕球するたび、「今のボール、いいよ」「オッケー!」と、元気よく声をかける。「いいピッチングのきっかけをつかめるように、アドバイスをしています」。チームの強みは、安定した投手陣。その土台づくりにも貢献してきた。

 一番頼りにされるサポートは、グラブやミットの修理だ。ひもが切れた選手から頼まれると、新品のひもを通して締め直す。選手全員のグラブとミットに、小鷹さんが手を入れた跡がある。

 ひもは太くて硬いため、修理をくり返すと指先が痛くなる。でも、苦にはならない。

 「グラブのひもが切れるのは、練習で打者が強い打球を打った証拠。打力が上がっていると思えるから、うれしいです」

 仲間のサポートに回って、気づいたことがある。「これまで、どれだけたくさんの人に支えてもらったことだろう」。中学時代、野球のアドバイスをして励ましてくれた父や、毎日ユニホームを洗ってくれた母の姿を思い出した。

 「見えないところで助けてくれたり、気づかってくれたりする人たちがいる。そのおかげで、みんなが動いていける。野球部で培った経験は、社会に出てからも役立つと思っています」

 あこがれの甲子園に、公式練習で初めて立った。「壮大な景色でした。ここで野球ができたら、どんなに楽しいだろうって思いました。でも、後悔はないです」

 ふるさとを離れ、目標に向かって励んできた日々を誇らしく思えた。

 第107回全国高校野球選手権大会の山形代表・日大山形は、10日の第1試合で県岐阜商と対戦する。小鷹さんはスタンドで、ありったけの思いを込めて太鼓を響かせるつもりだ。

 「選手たちには、いつも通りのプレーをしてほしい。大丈夫。きっとできるはずです」(渡部耕平)