<第107回全国高校野球選手権大会:花巻東4-1智弁和歌山>◇8日◇1回戦◇甲子園 智弁和歌山vs花巻東の一戦は4対1で…

<第107回全国高校野球選手権大会:花巻東4-1智弁和歌山>◇8日◇1回戦◇甲子園

 智弁和歌山vs花巻東の一戦は4対1で花巻東が勝利を収めた。

 戦前の予想を覆す試合スコア。智弁和歌山は強打の花巻東に失点することはあっても、1点だけで終わるとは想定外だっただろう。花巻東サイドも3失点は覚悟していたようだ。

 なんといっても花巻東の左腕・萬谷 堅心投手(2年)の投球が大きい。花巻東の佐々木監督は萬谷の先発起用について「智弁和歌山さんの長打を抑えるには、逃げるボールを持つ萬谷が良いと思いました」と明かす。

 その言葉通り、常時130キロ〜135キロの直球だが、110キロ前半のスライダー、チェンジアップが低めに決まり、のらりくらりとした投球スタイル。ボール先行していたが、要所でのスライダーの制球力が高かった。

 先制打を打った福元 聖矢外野手(3年)は「緩いスライダーに気をつけていたのですが、ボール球を打たれてしまった」と悔やむように、7安打中、長打はわずか1本。佐々木監督が警戒していた長打を抑える投球ができていた。

 両チームともあの場面が大きかったと語るのが5回表、萬谷のバント封殺だ。智弁和歌山は5回、安打と四球で無死一、二塁のチャンスを作る。3番山下 晃平外野手(2年)にもボール先行だったが、花巻東はバントを警戒し、ファースト、サードは前進したり、牽制を繰り返したりと、プレッシャーをかける。そして2ボールから山下はバントを試みたが、萬谷が素早く処理して、三塁で封殺した。二塁走者は俊足の藤田 一波外野手(3年)だったが、萬谷の処理が上回った。正捕手の高橋 蓮太郎捕手(3年)は「あの場面は本当に大きかった。2点以上は覚悟していた場面。投手陣は無死一、二塁を想定してずっとバント処理の練習をしていた。それを想定して練習させていた監督さんに感謝です」と笑顔で振り返った。

 佐々木監督は「この試合はあの回がすべてです」と語り、智弁和歌山・中谷監督は「結果的に痛いプレーとなりました。今年は犠打でつなぐのがうちのスタイル。二塁走者は俊足の藤田でありましたが、これは大きいプレー」と悔やんだ。

 このプレーは萬谷に勇気をもたらした。それ以降、打たれにくいコースにストレート、スライダーが決まり、智弁和歌山は凡打を積み重ねた。勝敗を分けたプレーであった。