厳しい暑さが続く中、学校での部活動に参加する生徒たちの熱中症をどう防ぐか。各地で取り組みが広がっている。 「きょうもほ…
厳しい暑さが続く中、学校での部活動に参加する生徒たちの熱中症をどう防ぐか。各地で取り組みが広がっている。
「きょうもほとんどの中学校で暑さ指数が31を超えていますね」
神奈川県横須賀市教育委員会の担当者はこう言った。見ていたのは、市が今年6月末までに全市立中学校(23校)と市立高校(1校)に設置した独自の「熱中症予防対策システム」だ。市教委でも、システムのセンサーを設置した学校の暑さ指数が、リアルタイムでパソコンで確認できるという。
市は今年度、市の熱中症予防ガイドラインを改訂。これまでは環境省や日本スポーツ協会の基準と同様に、暑さ指数(WBGT)が31以上の場合は「運動は原則中止」としていた。
ただ、ここ数年、暑さの影響で市内でも子どもが熱中症で救急搬送されるケースがあり、今年度からは31を超えた場合は「運動は中止」と、「原則」を外した。さらに、市内に拠点を置く企業と協力して「熱中症予防対策システム」を導入した。
これまでは、体育の授業や部活動の前などに、教員が手持ちの指数計で暑さ指数を測り、手書きで記録していたという。システムでは、各校が校庭と体育館にセンサーを設置。自動で暑さ指数がリアルタイムで計測され、記録される。教員の手間が省けるだけでなく、職員室でもパソコンやスマートフォンで指数の変化を確認することができ、活動の中断の判断が可能になった。
■「厳しすぎる」という声はない
夏場は部活動の大会が数多くある。市教委によると、ガイドラインの改訂前には、「活動できない日が増えると、子どもたちの(競技への)モチベーションが下がるかもしれない」という心配の声があったものの、市教委の担当者は「厳しすぎるという声はなかった」。システム導入後は、「子どもたちの安全に常に配慮することができるようになったと現場からは好評です」と話す。
総務省消防庁の集計では、7月7日~8月3日の4週間で、熱中症の疑いで救急搬送された少年(7~17歳)は、全国で2929人(速報値)。発生場所別では、学校などの教育機関が1067人だった。
■「運動中止」が定着
三重県教育委員会も2023年8月に熱中症対策のガイドラインを強化。横須賀市のように、WBGT31以上は「運動は中止」と踏み込んだ。きっかけになったのは、この年に山形県米沢市であった、部活動から帰宅途中の女子中学生(当時13)の熱中症による死亡事案だ。
三重県内で開催される県教委が主催・共催の大会は、31以上になった場合は中止や延期とする。ガイドラインの強化から2年が経ち、スポーツ団体や大会の主催者も試合の開催時期を変更したり、1日の試合数を減らしたりして対応しているという。県教委の担当者は、「子どもの熱中症での救急搬送は減ったと聞く。定着しているのではないか」と話した。