「脂肪肝でもバナナは食べていいの?」そう疑問に思う方は少なくありません。脂肪肝(MASLD)は、かつて「NAFLD(非ア…

「脂肪肝でもバナナは食べていいの?」

そう疑問に思う方は少なくありません。脂肪肝(MASLD)は、かつて「NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)」と呼ばれていましたが、2023年からは代謝異常を前提とした「MASLD:Metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease」として定義が刷新されました。

脂肪肝の治療では、糖質・脂質の過剰摂取を控えることが基本ですが、バナナは“果物=果糖が多い”として敬遠されがちです。一方で、バナナ、とくに未熟なグリーンバナナには、レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)が豊富に含まれ、脂肪肝の改善に寄与する可能性が注目されています。

本記事では、バナナの種類と成熟度による影響の違い、脂肪肝との関係性の科学的エビデンス、食べ方の注意点について詳しく解説します。

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■バナナの成熟度と栄養成分の変化

バナナは熟すにつれて以下のように栄養素が変化します:

成熟度/主な糖質の種類/血糖値への影響/レジスタントスターチ量
グリーンバナナ/レジスタントスターチ多め/低GI/多い(40〜50%)
黄色バナナ/デンプン減少・ショ糖増加/中GI/減少(10〜15%)
完熟バナナ(黒斑あり)/単糖類増加/高GI/極少(5%未満)

つまり、脂肪肝の方が摂取すべきなのは「グリーンバナナ」であり、完熟バナナは注意が必要です。

■グリーンバナナに含まれる「レジスタントスターチ」の働き

レジスタントスターチは、小腸で吸収されず大腸で発酵される食物繊維様の成分で、以下のような作用が確認されています:

・腸内環境の改善(善玉菌の増殖、短鎖脂肪酸の産生)
・インスリン感受性の向上
・肝臓への脂肪蓄積を減少
・食後血糖値の抑制

特に、グリーンバナナに含まれるRS2型レジスタントスターチは、肝脂肪の減少効果が報告されています。

出典:Ni Y, Zhuge F, Nagata N, et al. “Effects of resistant starch supplementation on liver fat and metabolic markers in patients with NAFLD: a randomized controlled trial.” Clinical Nutrition. 2023;42(5):987–995.
→ このRCT(Randomized controlled trial)では、NAFLD患者にRS2を12週間投与したところ、肝脂肪量・インスリン抵抗性・炎症マーカーが有意に改善しました。

■「バナナは太る」は誤解?脂肪肝の方に伝えたいポイント

バナナはGI(血糖指数)が比較的高く、果糖を多く含むため、完熟バナナを大量に食べると脂肪肝を悪化させるリスクがあります。

しかし、以下のように摂取することで、むしろ改善効果が期待されます。

【脂肪肝の人がバナナを食べる際の5つのルール】

1.未熟なグリーンバナナを選ぶ(可能なら冷凍で販売されている青バナナ)
2.1日1本までを目安に、朝〜昼間に摂取
3.できれば、他の食物繊維(ブロッコリー、豆類など)と一緒に摂る
4.調理法は焼かずに、加熱を避けてそのまま摂る(加熱でRSが減少)
5.完熟バナナ(黒い斑点がある)は控えめに

■ グリーンバナナ vs サプリメントのRS:どちらが良いか?

グリーンバナナから摂取できるRSは自然由来であり、副作用が少なく、腸内フローラの多様性を高める利点があります。

一方、RSをパウダー化した「レジスタントスターチサプリ」もあり、より確実な摂取量管理が可能です。ただし:

・サプリは下痢・膨満感を引き起こしやすく、少量からが基本
・成分の質・由来によって効果に差があるため、選定に注意

食品としてのグリーンバナナは、「摂取の習慣化」がしやすい点でも有利です。

■バナナ以外にも肝臓に良い食品は?

脂肪肝改善のためには、低GI・高食物繊維・良質なたんぱく質を含む食材が推奨されます。

・ブロッコリー、アスパラガス、枝豆などの野菜
・青魚、卵、鶏むね肉などのたんぱく質源
・発酵食品(納豆・キムチ・ヨーグルト)による腸活

これらはグリーンバナナと組み合わせて摂取することで相乗効果が期待されます。

■まとめ:脂肪肝とバナナの関係は「熟度」で決まる

脂肪肝=果物NGという誤解は根強いですが、グリーンバナナはむしろ脂肪肝の改善に有益な食品です。

・グリーンバナナはレジスタントスターチを豊富に含み、腸活・肝脂肪減少に有効
・熟しすぎたバナナは血糖値を急上昇させ、肝臓に負担をかけるため注意
・食べ方・タイミング・組み合わせに配慮すれば「脂肪肝でも安心して食べられる果物」

【参考文献】
Ni Y, Zhuge F, Nagata N, et al. Effects of resistant starch supplementation on liver fat and metabolic markers in patients with NAFLD: a randomized controlled trial. Clin Nutr. 2023;42(5):987–995.
Maziarz MP, Preisendanz S, Juma S, Imrhan V, Prasad C. Resistant starch lowers postprandial glucose and leptin in overweight adults consuming a moderate-fat diet: a randomized-controlled trial. Nutrition Journal. 2017;16(1):14.
Goff HD, Repin N, Fabek H, El Khoury D, Gidley MJ. Dietary fibre for glycaemia control and diabetes management. Current Opinion in Clinical Nutrition and Metabolic Care. 2018;21(6):471–478.

[文:池尻大橋せらクリニック院長 世良 泰]

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

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池尻大橋せらクリニック院長・世良 泰(せら やすし)

慶應義塾大学医学部卒。初期研修後、市中病院にて内科、整形外科の診療や地域の運動療法指導などを行う。スポーツ医学の臨床、教育、研究を行いながら、プロスポーツや高校大学、社会人スポーツチームのチームドクターおよび競技団体の医事委員として活動。運動やスポーツ医学を通じて、老若男女多くの人々が健康で豊かな生活が送れるように、診療だけでなくスポーツ医学に関するコンサルティングや施設の医療体制整備など幅広く活動している。