岡山県で開かれている全国高校総体の男子ハンドボールで、2連覇を目指した駿台甲府(甲府市)は6日、準々決勝で富山代表の氷…

 岡山県で開かれている全国高校総体の男子ハンドボールで、2連覇を目指した駿台甲府(甲府市)は6日、準々決勝で富山代表の氷見に敗れた。駿台甲府は昨年、「高校3冠」を果たした全国屈指の強豪。今年も春の選抜大会を制し、高校総体に挑んだ。夢は、後輩たちに託された。

 3回戦まで接戦を勝ち上がってきた駿台甲府。この日の準々決勝は、持ち前の堅い守備と速い攻撃で、前半を17-13とリードして折り返した。

 腰の故障から復活したエース・小路凰太選手(3年)が鋭いカットインを見せ、玉川翔琉選手(3年)が正確なサイドシュートで得点を重ねた。

 だが、後半は「リズムをつかみきれない状況が続いた」(八田政史監督)。氷見に徐々に差を詰められ、残り10分少しのところで勝ち越された。その後は一進一退の攻防が続いた。

 延長戦でも決着がつかず、試合は、サッカーのPK戦のような「7メートルスローコンテスト」に。互いに1人ずつ外して迎えた5人目。駿台甲府の選手がシュートを外し、敗退が決まった。

 駿台甲府は、高校総体に32回連続の出場。3位入賞を経て、2024年に初優勝した。この年は春の選抜大会、秋の国民スポーツ大会とあわせて「高校3冠」を達成した。

 主力選手が総入れ替えとなった今年も、春の選抜を連覇。2年連続の「高校3冠」を目標にしていた。(棟形祐水)

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 駿台甲府ハンドボール部主将の清水大地選手(3年)は、めったに怒らない。2年連続の高校3冠を目標に、正確なプレーと明るい性格でチームを引っ張ってきた。

 長野県千曲市出身。スピードを大事にする伝統が自らのプレースタイルに合っていると考え、駿台甲府に進学した。

 八田政久総監督宅に併設された「八田寮」で暮らす。チームメートと食事をともにし、皿を洗い、洗濯し、寝る。

 すべてはハンドボールのため。自慢のスピードに加え、判断力や正確なプレーが評価され、1年生の時からチームの主力の一人だった。

 昨秋、新チーム最初のミーティングで自ら主将に名乗りをあげた。「やりたそうな人がいなかったから」と照れるが、「明るい性格でチームを盛り上げてくれる」と八田政史監督も信頼を置く。

 主将として大事にしていたのは「怒らないこと」。「だって主将に怒られたら、シュンとしちゃうから。特に後輩は」。チームの主力には2年生も多い。練習や試合では、ポジティブな声かけを欠かさない。

 ただし、得点した後は感情を爆発させる。全力でガッツポーズしてチームメートやスタンドの観客を鼓舞する。主将がチームの「盛り上げ役」だとの自覚からだ。エースの一人、雨宮寛汰選手(2年)ら後輩からも慕われている。「先輩と後輩の仲がよいのは、うちの特徴かも」

 しかし、今年4月末、ピンチが訪れた。エースの小路凰太選手(3年)が腰の故障で離脱したのだ。エースを欠いたチームは練習試合でも負け、「チームの雰囲気は悪かった」。

 その後の関東大会でも選抜王者ながら優勝できなかった。試合後のミーティングでは「(小路選手)1人がいなくても、自分に何ができるか考えよう」と厳しい言葉で、選手に自覚をうながした。

 6日の準々決勝では、肝心の場面でシュートを決めた。守備でも体を張ってチームを鼓舞した。

 「後輩にはこの試合を忘れずに糧にして来年また優勝を狙って欲しい」。敗退が決まった後、そう話した。(棟形祐水)