8月1日、日本高野連は来年度からDH制を正式に承認することを発表した。 DH制の動きは野球界の各カテゴリーで進んでいる。…

8月1日、日本高野連は来年度からDH制を正式に承認することを発表した。

 DH制の動きは野球界の各カテゴリーで進んでいる。高校野球同様、DH制不採用だった東京六大学、関西学生野球連盟も26年春のリーグから導入を決定。さらに4日、プロ野球のセ・リーグも27年に導入されることが決まった。

 高校野球でDHが使えなかったのは、公式戦のみで、練習試合を見ると、DH制を活用するチームが数多くあり、現場としてはようやく公式戦でも使えるという感想だろう。また7イニング制についても、検討を進めているという。

 こうした動きについて、4人の記者が語り合った。

*参加記者:河嶋宗一(編集部主筆)手束仁・大島裕史・馬場遼(ライター)

ソフトボールは参考になる

河嶋:ついにDH制が正式に導入されることが発表されました。

手束:DHはとてもいいルールです。練習試合でもよく見ていますからね。

大島:私はずっと高校野球、東京六大学を見てきて、投手が打席に立つのは日本野球の文化として見ていました。導入には複雑な思いはありますが、今の時代の流れからすると導入は止むなし、と見ています。最近は投手専任のチームが増えている中で、打席に立つのはリスクがあります。

馬場:良いルールだと思いますが、高校野球の現場を見ると、まだ打力の高い投手が多い。

私が取材する滋賀では、過去に山田 陽翔投手(近江-西武)もいましたし、今年は滋賀出身の奥村 頼人投手(横浜)が神奈川大会で2打席連続本塁打を打ったり、中心となる選手も多くいます。そうしたチームもあるので、活用法は各校に委ねられますが、公式戦で使えるのはいいと思います。

手束:ソフトボールのようにDP(指名選手・打撃専門)とFP(フレックスプレイヤー・守備専門)があっていいと思っています。各チームによって守りだけやらせたい、打撃だけやらせたいチームもあると思うので、ルール拡大によって各校の戦術の幅が広がればと思っています。

河嶋:ソフトボールのルールは確かに参考になる部分はあります。

手束:ソフトボールだとリエントリー(1回交代でベンチに下がっても、一度だけ再び試合に出場できるルール)がありますが、今のような猛暑でやる高校野球には良いルールだと思っています。記録の整合、リエントリーの周知など時間はかかるところはあると思いますが、選手の負担を経験するということを目的であれば、ソフトボールには現在の高校野球にとって参考になるルールが多くあります。

7回制導入の前にコールド制を

河嶋:一方、7イニング制についてはどうでしょうか。指導者の中では反対の意見が多いですが……。

大島:私も反対の立場です。野球は、3の倍数で作られている競技です。3アウト、3ストライクと、9回でやってきた歴史があります。高校野球はプロ、社会人、大学と同じイニング数でやってきた歴史があることを、私は大事にしてほしいと思いますね。

 国際大会で7回導入したのは、試合時間が長過ぎるから。試合時間短縮のために、検討材料として7回制の導入がありました。今の高校野球とは違う背景なんですよね。現場を見ても、8回以降にドラマが多い。

馬場:野球関係者が懸念されていたのは「7回制を取り入れると、選手たちは7回に慣れてしまうため、高校卒業以降、9回制の野球に慣れないといけない。高校野球はそれ以降のカテゴリーと同じように、9回制がいいのでは」ということでした。

 また、試合・時期によってイニングを変えてしまうと、記録の整合性を含めて、混乱が生じるかなと思っています。

大島:7回制は野球の根本が変わってしまいます。その前に甲子園でコールド制があっていいと思います。応援に来ている方のために、せっかくの甲子園だからという考えで、9イニングをきっちりやるというのが長く根付いています。

 ただ、最近は大差がつくゲームも多い。大差がつくゲームは試合時間が長い。野球の根本を変えてまで「7回制」にするのならば、まずは地方大会同様のルールでコールドゲームを導入するのが先だと思う。

地方大会運営の難しさ

手束:私も7回制はきついなぁ…と思いますよね。今、考えると、野球を9回、3ストライク、3アウトと考えた方は凄い方だなと思っています。

 ただ、猛暑の中、負担を減らしたい意向は理解できます。他のスポーツだと、試合によって、セット数が変わりますよね。たとえば高校バレーの場合、準々決勝まで3セットマッチで、準決勝、決勝が5セットになっています。ラグビーはトップは40分、高校は30分だけど、地方は25分。

野球に例えると準々決勝まで7回制だけど、準決勝から9回制。シチュエーションによってイニング数を変えるのはありだと思っています。

河嶋:ルールとして取り入れるのはありだけど、一律は反対ということですね。

手束:そうですね。状況によってですね。

河嶋:今年、地方大会の報道説明会に参加して、高野連の方々の説明を聞いて感じるのは、時間管理の難しさです。猛暑によってクーリングタイム、水分補給、さらに今年は9時、15時の二部制や、愛知では14時から2試合のサマータイム制も入りました。秋、春に比べて、かなり時間を長く使っています。そこで壁となるのは球場の使用時間です。

 長い時間の予約は取っているけれど、そこまで長くできない。専任のスタッフが多くいる甲子園と違って、地方大会は教員と野球部員、マネージャーの手伝いで成り立っていて、拘束時間も長いです。なるべく拘束時間を減らしたいのは、当然の考えです。

 試合のステータス、大会の進行状況、球場の使用時間によって、7回制にするのはありだと思っています。ただ、大会終盤の熱戦を取材した私からすると、やはり9回制だからこそ面白い部分はあります。

 エンタメ性、記録の整合性、大会運営など総合的に鑑みて、判断してほしいと思います。

ベンチ入り、国スポ、リエントリー……

河嶋:高校野球は変革期に入ってきていますが、こういうルールがあるといいなというのはありますか。

大島:ベンチ入り人数の拡大ですね。25人にすると、選択肢が増える。チームとして機能しやすいという考えを持った指導者が多いですね。

河嶋:人数が絞られると、ベンチ入り選手は何でもできる選手が優先されやすいですが、人数が増えれば、スペシャリストを入れやすいという考えがありますよね。春は25人、あるいは登録メンバーが25人だけど、試合によってベンチ入り20人を変更できる埼玉のような制度もありますけど、夏もあってほしいと思います。

大島:あと国スポのあり方ですね。近年は8校が出場していますが、対象となった学校、連盟は秋の大会のスケジュールを変更したり、新チーム結成が遅れた中で、二部隊で動くなど、結構やりくりが大変だと聞きます。国スポは県の選抜チームで戦うのもありだと思います。県の選抜チームの監督は、今は現場にいない名監督がついて戦うのもありかなと。

 最近は県選抜の対抗戦も増えてきていますけど、いずれも国スポで戦うチームは夏の甲子園出場チームでいいのか。それを議論してもいいと思います。

手束:冒頭でも述べましたけど、リエントリー制度です。高校野球は猛暑対策のために変革が迫られている感じがありますけど、これからの高校野球は人数が限られた中で試合をするチームがかなり増えると思います。その中でソフトボールのルールも参考にしながら、選択肢が増えることを期待しています。