◇女子メジャー最終戦◇AIG女子オープン(全英女子) 最終日(3日)◇ロイヤルポースコール(ウェールズ)◇6580yd…
◇女子メジャー最終戦◇AIG女子オープン(全英女子) 最終日(3日)◇ロイヤルポースコール(ウェールズ)◇6580yd(パー72)
布団に入ってしばらくすると、スマートフォンの着信音に起こされた。眠い目をこすって小声で電話に出ると、「どしたん、そんな小さい声で」ととぼけた娘の声が聞こえてきた。「夜中3時やで、って言ったら切るかと思ったら、しゃべりだすから。寝不足で、そのまま仕事に行っています」。山下美夢有と母・有貴さんのそんなやりとりは、もうすっかり日常になった。
ゴルフに関する連絡は、父・勝臣さんへ。とりとめもない話がしたい時は、有貴さんに電話が掛かってくる。「こんな事があった」「こんなご飯が美味しかった」「早く、会いたいね」。転戦先で撮った写真を添えての連絡は、親の心配に気づいているからだろうか。
「不安です」。米ツアーの出場権をつかんだ娘を、ひとりで送り出すのは今でも心配だ。飛行機が無事に行き先に着いたかどうかも気をもむ日々。日本時間の何時だろうが、まめに声を聞かせてくれる娘はやっぱり親孝行だ。
2022年「ワールドレディスサロンパス」では、5月8日の母の日に、初日から首位を守る完全優勝。6月18日に最終日を迎えた翌年「ニチレイレディス」では“父の日V”を達成した。「両親にも、きょうだいにも優しい子です」と勝臣さん。今週も、2日目に「65」をマークして単独首位に立った後、電話をかけたのは弟のプロゴルファー勝将だった。国内ツアー「リシャール・ミル チャリティトーナメント」で予選落ちしそうな弟を心配し、山下は「どんな練習してるの?」と連絡。「やっぱりずっと一緒にゴルフをやってきたので。徐々に頑張ってほしいなって思います」とメジャーを戦いながら、弟の試合展開をチェックしていた。
その2日後、両親と妹の蘭さんが見守る中でメジャー優勝を達成。「今度は、自分の誕生日に優勝やから」(勝臣さん)と、8月2日に24歳の誕生日を迎えたばかりの娘の姿をうれしそうに見つめた。次週「北海道meijiカップ」参戦のための一時帰国を挟み、再び米ツアーに飛び立つ娘を見送ることになる。「日本にいても、アメリカ時間で生活しています」(勝臣さん)と、時差ボケに悩む日々はまだまだ続きそうだ。(ウェールズ・ポースコール/谷口愛純)