初の甲子園に臨む綾羽。選手たちは、試合で劣勢に立たされても「明るく前向きに」プレーする。そうやって戦えるヒミツは、ベン…

 初の甲子園に臨む綾羽。選手たちは、試合で劣勢に立たされても「明るく前向きに」プレーする。そうやって戦えるヒミツは、ベンチにあり?

 綾羽のベンチは、千代純平監督(36)が中央に立ち、雰囲気が明るい。そのベンチの明るさを、綾羽を進学先に選んだ理由に挙げる選手がいる。

 エースの藤田陸空(りく)投手(3年)がそう。中学生のときに綾羽の試合を見学。ベンチで千代監督と選手がハイタッチする光景を見るなどして綾羽に決めた。北川陽聖主将(同)も「試合の映像で、ベンチで監督中心に楽しそうにやっているのを見ていた」と話す。

 千代監督は綾羽OB。内野手としてプレーし、主将を務めた。当時の監督は故・田中鉄也さん。情熱と執念があった。「恩師」の思いを継ぎつつ、現チームは「明るく前向きに」をスローガンに掲げる。だが、「のびのびとは一線を画している」ときっぱり言う。

 試合で劣勢をはね返すためには、明るく前向きにプレーしないといけない。だが、それは簡単なことではない。だから「しんどい練習ほど前向きにやれ」と言ってきた。

 一方、普段の指導者と選手の関わり方では「はい、いいえ、で済まさない」と指導し、会話をすることを大切にしてきた。「試合の前に監督が笑いを取ることもある」と、記録員でベンチ入りしてきたマネジャーの中川萌愛(もあ)さん(3年)。そんなメリハリのすえに、明るく前向きになれるベンチはできあがったようだ。

 その真価を発揮したのが、近江と戦った滋賀大会準決勝。九回の時点で2点を追っていたが「負けているとは思えないぐらい盛り上がっていた」(中川さん)といい、4得点して逆転勝ちした。

 千代監督が、ベンチの中央に立つようになったのは、昨年のチームから。「普段から『明るく前向きに』と言っていて、私のスタイル的にも……」と話す。甲子園でも、明るく前向きに試合に向き合うベンチに注目だ。(仲程雄平)