第107回全国高校野球選手権岐阜大会は、県岐阜商が優勝し31回目の甲子園出場を決めた。早い段階で姿を消す有力校が目立っ…
第107回全国高校野球選手権岐阜大会は、県岐阜商が優勝し31回目の甲子園出場を決めた。早い段階で姿を消す有力校が目立った一方、好投手が多い大会でもあった。
県岐阜商は第2シードで登場。昨秋、今春とも県大会は8強止まりだった。だが大会初戦で鮮烈なスタートを飾る。昨秋の県大会で同じ8強だった大垣養老の投手陣に5本塁打を含む18安打を浴びせて大勝した。
だが、緩まなかった。「逆にまずいと思った」と藤井潤作監督。翌日、「逆方向に低く強い打球」を打つ練習を指示。大振りになりがちな意識を削った。各打者はその後も自身のスイングを崩すことなく打ち続けた。
結果的に6試合のうち4試合で2桁得点を挙げ、全試合で2桁安打を記録。チーム打率3割9分6厘、計8本塁打と破壊力を見せつけた。
加えてエース柴田蒼亮投手(2年)は5試合で28回を投げて失点1と抜群の安定感。「絶大なる信頼をもって送り出している」(藤井監督)。先発も抑えもこなし大車輪の働きを見せた。
県岐阜商と同ブロックでライバルと目されていたのは、昨夏の決勝で同校を破って優勝した岐阜城北だった。春の県大会を制し東海大会も4強。
だが3回戦で多治見工との投手戦の末に完封負け。持ち前の粘り強さを発揮できなかった。
昨夏の甲子園でも投げたエース亀山優斗投手(3年)は8回を被安打3、1失点に抑えたが、報われなかった。「ついてきてくれた仲間には感謝しかありません」と語り、球場を後にした。
岐阜城北と同じく大垣日大も3回戦で敗れた。昨秋の東海大会を制し今春の甲子園に出場。優勝候補と目された。
試合は甲子園のマウンドを踏んだ中野翔真投手(3年)と、帝京大可児・富田櫂成投手(3年)のエース対決になった。
小中高と対戦してきたという両投手は、意地の投げ合いで無失点を貫く。九回裏にサヨナラ負けを喫した大垣日大の高橋正明監督は「良いピッチングでした。点を取ってやれなかった監督の責任です」とかばった。
春の県大会4強で第1シードの大垣商は初戦で姿を消し、同じく岐阜第一も準々決勝で敗れた。エース水野匠登投手(3年)ら好投手5人を擁し、強力打線は帝京大可児・富田投手から6点を奪ったが、競り負けた。
田所孝二監督は敗因の一つにミスを挙げ、「いい経験になったと思うが、大学で野球を続ける子ばかりなので、叱らなければ」とあえて厳しく語った。
準決勝に進んだ帝京大可児は、春の県大会準優勝の中京と対戦する。富田投手が中京のエース鈴木悠悟投手(2年)との投げ合いを制し、1点差で競り勝った。
中京の藤本貴久監督は「(富田投手の)疲れは見えたがつけ入る隙が無かった。うちの打線より彼の方が一枚も二枚も上手だった」と脱帽した。
決勝に進んだ帝京大可児は準決勝までの5試合で打率2割5分、本塁打はゼロ。田口聖記監督は「長打があるチームではない。間(あいだ)を抜く打撃を心がけ、粘って簡単に三振しない。四球は価値がある」と指導してきた。
投手中心の守りの野球が信条で、「富田は状況に応じてギアチェンジができる。要所でギアを上げて最少失点に抑え込んでくれれば」と決勝に臨んだ。
だが、大垣日大、岐阜第一、中京といった優勝候補との激戦を制してきた富田投手を、県岐阜商打線は序盤に攻略。前日も完投したという条件は富田投手と同じだった県岐阜商・柴田投手だが、7回を無失点。完封リレーで有終の美を飾った。
県岐阜商以外のこれら有力校に、好投手がもう1人いたら、大会の行方はどうなっていたのだろう――。そんな想像さえしてしまった。
各地から好投手が集う全国選手権は、5日に阪神甲子園球場で開幕する。(高原敦)