DeNAに“即戦力”として加わったビシエド。後半戦の逆襲に向け、彼の復調は大きなファクターとなる(C)産経新聞社インコー…

DeNAに“即戦力”として加わったビシエド。後半戦の逆襲に向け、彼の復調は大きなファクターとなる(C)産経新聞社

インコース問題解消の鍵は「キレ」

 打線の火力不足に苦しんでいる今季のDeNAに、待望とも言える新助っ人が駆け込みで入団した。元中日の主砲で、今季はメキシコでプレーしていたダヤン・ビシエドだ。

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 今月22日に実施された入団会見では、「全く衰えは感じていません。36歳にはなっていますけれども、前と変わらず力強いスイングができていると思います」と発言。なんとも頼もしいセリフが印象的だった。

 2015年オフに中日に入団したビシエドは、初年度から打線の核とし機能。18年には首位打者と最多安打のタイトルを獲得し、守備でも20、21年と連続してゴールデングラブ賞も受賞するなど攻守に優れた助っ人として名を知らしめた。

 立浪和義政権下で出場機会が減少し、24年に契約解除となったビシエドだが、NPB在籍9年で打率.287、ホームラン139、打点549と堂々たる数字を記録。さらに今季メキシカン・リーグで記録した打率.276、8本塁打の成績がDeNAの目に止まり、晴れて入団が決定。編成のトップである萩原龍大常務取締役チーム統括本部長も、「打線につきましては引き続き補強が必要」と獲得意図を説明する通り、打線強化の側面が大きい契約となった。

 ただ、期待するバッティングに関しては懸念材料もある。

 何よりの不安は、時の立浪監督も公言していた“インコースへの対応”だ。今月29日のDeNAでのデビュー戦(対ヤクルト)でも、ビシエドはインコースのストレートに詰まらされ、あっさりと内野フライに打ち取られる場面があった。無論、他球団が長年のデータを活用しない訳がなく、今後も「ウイークポイント」として突いてくるのは想像に難くない。

 では一軍の打撃陣を預かる首脳陣の見解はどうか。

 田代富雄野手コーチは、「やっぱりバットの出方、角度はいいよね」とビシエドの持つスラッガーとしての資質を称賛。続けて、「日本での実績もあるしね」とNPBのピッチャーを知り尽くしているアドバンテージを強調した上で、「年って言っても36でしょ? まだまだ老け込む年齢でもない」と周囲が気にする加齢による衰えも問題なしと言い切った。

 ただ、多くの強打者を手塩にかけてきた名伯楽は、「身体のキレだな。もうちょっとキレてこないとインコースの厳しいところはキツイよな」と、やはりインコースの捌き方を問題視。あくまでもキレが出てくれば、問題解消へ向かうのではという観測をしながらだが、状態次第で「ちょっとしたアドバイスはする」と改善策を模索する可能性を示唆した。

 また、現役時代に、同じ右のスラッガーとして、DeNAで不動の4番を張っていた村田修一野手コーチは「打撃練習で当たった時の打球は伸びます。バットも重いのを使ってますし、ちょっと甘いボールはセンターや逆方向にガーンっていきますよ。むちゃくちゃ力が落ちているということはない感じではないです」と評価。一方で、「確かに田代さんの言われるようにキレがないですね」と名伯楽の意見に同調した。

「キレがないからインサイドのボールに詰まっちゃう。キレが戻ってくれば、前に飛ばないで後ろにファールになる可能性もあるんです」

「『俺のやり方でやってダメなら仕方がない』と言うならば…」

 さらに「ファームでも内側はちょっと苦労しているように見えました」と言葉を重ねる村田コーチは、「練習のボールでも完璧には打てていないんです。その辺は身体のキレや年齢の関係から出てきていると思うので」と問題解消が簡単な課題ではないと推測する。

 そこには、現役時代に同じ悩みを抱えていた者だからこその想いもある。

「僕も苦手だったんで。インコースが対応できなくてそこに意識が集中しちゃうと、今度は外の球にクルクルバットが止まらないで回っちゃう。そこに対応出来ている年は、(打率も)3割を超えるくらい打てるんです。

 インコース得意な右バッターは天才しかいないんですよ。落合(博満)さん、和田(一浩)さん、二岡(智宏)さんとかですから。基本は踏み込んで打ちに行くので、インコースがネックになる右バッターは多いんです。そこを捌き切れるような対策を練ってやるかが大事なのかなと思います」

 決して突き放したりはしない。村田コーチが提唱する具体案はこうだ。

「もともと遅めに足を上げてタイミングを取るタイプなので、内に入れられやすい感じの打撃フォームなんです。それは本人もわかっているし、僕ともその話はしています。なので自分でどうやってゆったりタイミングを取っていけるかというところですかね。早めにタイミングを取ることが出来ないのであれば、もう打席を(ホーム寄りから)離れて立つしかないでしょうしね。インコースが窮屈にならないように」

 ただし、DeNAの現状は「調子が上がってくるのを待つという段階ではない」。村田コーチも「すぐにでも結果を出してもらわないと、チームは浮上できない」と危惧するように、後半戦の胸突き八丁の時期だけに、ビシエドの復調を悠長に待ち構えてはいられない。

「そこら辺の認識を僕らが話をして、本人がどこまで受け入れるのか。『俺のやり方でやってダメなら仕方がない』と言うならば、それも彼の助っ人としての人生ですから」

 結果がすべての世界を熟知している。だからこそ村田コーチは、密にコミュニケーションを取った上で選択肢を与え、あとは本人に任せるスタンスで向き合っていくと結んだ。

 横浜の地に足を踏み入れてまだ数日。それでも「大歓声を受けてすごく嬉しかったですし、皆さんから『ようこそ!』っていう気持ちが伝わりました。なんとかすぐに結果を出したいです」と語る本人も周囲から求められているモノは、当然理解している。

 プロとしての仕事を果たすため、ウイークポイントを潰すことは必須。いままでの手法を貫くのか、それとも変化させるのか――。“エル・タンケ”の第二章が始まった。

[取材・文/萩原孝弘]

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