英国で「サッカーを国民の手に取り戻す」ことを目的とした法案が可決された。莫大な収益をもたらすプレミアリーグ他、ビッグビ…
英国で「サッカーを国民の手に取り戻す」ことを目的とした法案が可決された。莫大な収益をもたらすプレミアリーグ他、ビッグビジネスとして扱われることが多いサッカーに、「健全性」を与えようというものだ。サッカージャーナリスト大住良之は、この動きを「革命」と考える。
■欧州の「主要リーグの合計額」以上
北海に面するグリムズビーという町は、かつて英国一の漁業の町だったが、現在はその漁業も衰退し、人口も10万人を割る静かな町となっている。ここをホームタウンとする「グリムズビー・タウンFC」は、かつては1部リーグでプレーしたこともあったが、現在は「EFLリーグ2」。すなわち「4部」に所属している。このクラブの共同オーナーで元会長のジェイソン・ストックウッドが中心となり、いくつものクラブが集まって「フェア・ゲーム」という組織をつくり、この法案の支持を表明してきた。
ストックウッドは「重要なのは利益の再分配である」と強調する。
「プレミアリーグの放映権収入は、現在、欧州の主要リーグの合計額を上回るほどに成功を収めている。しかし、その成功の背景には、1888年に誕生して以来、イングランドのサッカーを育ててきた『リーグピラミッド』に関与した、すべてのクラブの過去・現在の貢献があることを忘れてはならない。イングランドのサッカー文化、その強さを支える『エコシステム』の繊細なバランスの上に成り立っている」
■選手の年俸は数年で「30%」上昇
「たしかに、プレミアリーグは1992年にイングランド・リーグ(EFL)から分離独立し、世界的な成功を手に入れた。その報酬は当然のものである。しかし、ディビジョンや規模の大小を問わず、かつての『フットボールリーグ』のすべてのクラブがその歴史に貢献してきたのは間違いない。そうしたクラブが生き残り、健全に活動を続けていくことは、イングランドの生活にとって必要不可欠なものである」
現在、イングランド下部のクラブは、選手の年俸の高騰に存立を脅かされている。新しいオーナーがイングランドのトップリーグを有力な投資の対象としてだけ考え、クラブを買収しては選手たちの年俸を引き上げてきた。わずか数年間で、イングランドの5部までの選手の年俸は30%も上昇しているという。
ストックウッドはまた、「プレミアリーグは年俸の高騰を止め、そこで生まれた資金を地域のサッカー文化を発展させるために使うべきだ。女子サッカー、インフラ整備、アカデミーなど、クラブを長期的に育成することに資金を回し、クラブを地域社会に深く根づいたものにさせるべきだ」と主張する。
■サポーターの願いは「入場料」と…
その一方で、プレミアリーグが、英国経済にとって重要な「ソフト」であるのは間違いない。ストックウッドは、「この法律は、プレミアリーグの価値を下げるものではない」とも言う。
イングランドの130ものクラブのサポータークラブで構成された「フットボール・サポーター協会(The Football Supporters‘ Association)」も、サッカークラブをコントロールする何らかの方策が必要と主張してきた。この協会がとくに主張しているのは、入場料の高騰を抑えること、歴史的なクラブカラーやエンブレムを勝手に変えないこと、ファンの意向を無視してスタジアムを移転しないことなどだった。
新法は、この考え方も十分に反映したものとなっている。サポーターは拒否権を持つわけではないが、クラブはサポーターと協議し、その意見を考慮したことを示す義務が課されている。