韓国で行われた男子のE-1選手権は、サッカー日本代表の優勝で幕を閉じた。最終戦では韓国代表に1-0で競り勝ったが、ライ…
韓国で行われた男子のE-1選手権は、サッカー日本代表の優勝で幕を閉じた。最終戦では韓国代表に1-0で競り勝ったが、ライバルの「底力」を見せつけられた。これまでも両国のサッカーは、代表チームはもちろん、国内リーグおいても競い合うことで、発展を遂げてきた。その「これまで」と「これから」を、サッカージャーナリスト後藤健生が現地リポートする!
■危険な「ラフプレー」を流す傾向も
浦項対全北の試合でも、全北の1トップのコンパーニョと浦項のCB全民光(チョン・ミングァン)との激しい空中戦でも肘撃ちのような場面があったが、イ・ドンジュン主審は反則を取らない。そこで、前半27分に2人の間に小競り合いが発生。これはなんとか収まったが、すぐに全北の右サイドハーフ全晋于(チョン・ジヌ)と浦項のウィングバック、オ・チョンウォンも睨み合いをはじめ、一触即発の雰囲気が漂った。
浦項の観客はこうしたプレーもけっこう楽しんでおり、挑発的なプレーをした全北のサイドバック金太煥(キム・テファン)に対してブーイングを浴びせ続けた。
さすがに、後半に入るとイ・ドンジュン主審もファウルを厳しくとるようになったが、こうしたラフプレーを許容していては選手の負傷にもつながる危険がある。
前日に観戦した大邱FC対金泉尚武の試合でも、チェ・サンヒョプ主審はラフプレーを流す傾向にあった。
■笛を吹く傾向は「中東諸国」と真逆
そうした判定基準とは関係ないが、この試合の前半追加タイムには大邱のCKの場面で飛び込んだ大邱のDFホン・ジョンウンがポストに激突して負傷し、救急車がピッチ上に入ってゴール前に倒れているホン・ジョンウンを収容するという珍しい場面もあった。
中東諸国のレフェリーは、選手が倒れるとすぐに笛を吹く傾向にあるが、どうやら韓国の判定基準はそれとはまったく逆の傾向があるようだ。
サッカーのスタイルはかつての韓国に比べて近代化し、パスをつなぐサッカーを志向しているが、激しいプレー、アグレッシブな攻撃的姿勢が重視されているのは間違いない。
そういえば、試合前のアップの時間にサポーターたちはシュート練習の場面でゴールが決まると大歓声を上げていたが、一方でボール回しの練習ではJリーグ・クラブのアップ時に比べてパススピードが緩いようだった。
サッカーというゲームの中でどんなプレーを重視しているのか、その辺にも違いが見られるような気がする。
■画期的だった「専用スタジアム」の現状
浦項のスタジアムは「浦項スティールヤード」という。
浦項の親会社は「POSCO」(旧浦項綜合製鐵)である。朴正熙大統領時代の1970年代に日本の資金と技術供与によって設立された国策会社で、今では世界有数の製鉄会社となっている、日本海(韓国では「東海」)に面した小さな漁港だった浦項に製鉄所が建設され、その後、浦項は大都市に発展した。
その親会社であるPOSCO本社ビルのすぐ南に1990年に建設されたのが、浦項スティールヤードだ。約2万人を収容するサッカー専用スタジアムで、まだ旧式の陸上競技場を使うことが普通だった当時の韓国では画期的な専用スタジアムだった(僕も、2003年にこのスタジアムを取材に行ったことがある)。
すでに築35年を経ているが、最近もピッチの改修などが行われたというし、2層式のスタンドはかなりの急傾斜でピッチまでの距離が近く、非常に試合が見やすいスタジアムだ。スタジアムから大通りを挟んだ東側は高炉が建ち並ぶ広大な製鉄所となっているが、スタジアムや本社周辺は緑も多く、環境も良い。
■持て余し気味の「巨大スタジアム」
浦項スティールヤードが韓国最古の専用スタジアムだとすれば、大邱で試合を観戦したiMバンク・パーク(フォレストアリーナ)は2019年完成という新しいスタジアムだ。
大邱には、2002年ワールドカップで3位決定戦(トルコ対韓国)が行われた大邱スタジアム(収容6万6422人)があり、その後、ユニバーシアードや世界陸上なども開催されたが、Kリーグの試合で使用するには大きすぎた。また、都心部からバスで50分近くかかるのでアクセスにも問題があった。
一方、iMバンク・パークは収容力が約1万2000席とコンパクトだが、なにしろKORAIL(韓国鉄道公社)大邱駅から至近距離という便利な場所にあり、スタジアム南側にはタワーマンションが建ち並んでいる。僕が観戦した金泉尚武戦は激しい雨の中の試合だったが、それでも8562人の観客が入ったのはアクセスが良かったからに違いない。試合後は大邱駅のほか地下鉄が利用できるし、多くのバス路線が通っているので観客はストレスなく帰路に就くことができる。
韓国ではプロ・リーグが始まった1980年代には旧式の陸上競技場しかなかったが、その後、2002年ワールドカップのために多くの専用スタジアムが建設され、今でも多くがKリーグの本拠地として活用されている。
一方で大邱の例のようにKリーグの試合では巨大スタジアムを持て余していることも事実。たとえば、大邱の試合で観客数は8000人台だったが、収容力が1万2000人ほどということは満員に近いということになり、盛り上がりを演出することができる。
日本でも最近は西日本を中心にアクセスの良い専用スタジアムが次々と建設されているが、Kリーグの発展のためには、iMバンク・パークのような施設が増えることが重要なのではないだろうか?