緊張のスピーチに臨むイチロー氏(C)Getty Images 歴史を切り開いた活躍の裏には、細かな気遣いがあった。 現地…

緊張のスピーチに臨むイチロー氏(C)Getty Images

 歴史を切り開いた活躍の裏には、細かな気遣いがあった。

 現地時間7月27日、MLB通算3089安打を誇り、アジア人選手として今年1月に初めて米野球殿堂入りを果たしたイチロー氏(マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)が、米ニューヨーク州クーパーズタウンでの表彰式典に出席。ついに栄光の瞬間を迎えた。

【動画】イチロー氏のスピーチ 野茂英雄氏への感謝の言葉

 本人が「プレッシャーで押しつぶされそうになっている」と語った英語によるスピーチは、約19分間。時折、“らしい”ジョークを交えた内容は、出席した往年のスターたちはもちろん、米メディアやファンをも笑わせ、そして感心させた。

 自身の言葉で19年に及んだメジャーキャリアを振り返ったイチロー氏。その中で興味深かったのは、「野球は『プロとは何か』を僕に教えてくれた。今日ここにいるのは、まさにその姿勢のおかげだと信じている」と切り出して、聴衆に問いかけたパートだ。

 日米通算4367安打を放ち、2004年にはMLB年間最多262安打を記録したイチロー氏。しかし、その桁外れの記録の数々は、類まれなセンスによってだけ積み重ねられたものではないと言う。天才打者は、次のように話した。

「僕がここにいるのは、僕が他の誰よりも技術的に優れていたからじゃない。3000安打やシーズン262安打は、記者たちが評価してくれた数字です。記者たちが評価してくれたあの数字は、19年間、毎日、小さなことの積み重ねを一切欠かさずにやってきたからこそ、成し遂げられたと思います。

 僕は毎日、自分の道具を、自分で手入れしました。グラブの紐が緩んでいたり、スパイクを磨かなかったせいで、ベース上で滑るのは絶対に嫌だったんです。シーズン中だけでなく、オフシーズンにも本格的なルーティンに取り組んでいました」

 イチロー氏が道具や自身のコンディショニングに強い“こだわり”を持っていたのは、有名な話である。バットひとつとっても周囲には絶対触れさせず、同僚たちから「何が君をここまでさせるんだ?」(元マリナーズ外野手、マイク・キャメロン氏談)と指摘されたほどである。

 ただ、己の才能にだけ頼らず、いつ何時も努力を惜しまなかったからこそ、イチロー氏は、歴史的なプレーヤーとなった。

 グラウンドに立つための準備は、いわば「基礎」。その積み重ねの重要性をイチロー氏はスピーチ内で、こうも説いている。

「小さなことをコツコツと積み重ねていけば、成し遂げられないことなんてないんです。僕を見てください。身長は180センチぐらいで、体重は77キロほどです。アメリカに来た時、多くの人に『メジャーの選手と比べて細すぎる』と言われました。初めてプレーした時、その競争レベルの高さに圧倒されました。でも、僕は『準備』に対する信念を貫けば、他人や自分自身の疑念すらも乗り越えられると信じていました」

 昨今はありとあらゆる情報やデータが手軽に手に入る時代となった。その中で“近道”をして、成り上がろうとする選手も少なくない。しかし、イチロー氏のコメントを聞く限り、成功に近道などないと痛感させられる。いかなる人でさえも、努力を惜しんではならないのだ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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