(26日、第107回全国高校野球選手権高知大会決勝 高知中央3―2明徳義塾) 試合前のノックが終わった直後。高知中央の…
(26日、第107回全国高校野球選手権高知大会決勝 高知中央3―2明徳義塾)
試合前のノックが終わった直後。高知中央の堅田徠可(くうが)投手(2年)は、「やれるか」と山野司監督に聞かれた。先発予定だったエース松浦伸広投手(2年)が右ひじの違和感を訴え、投げられないというのだ。
驚いたが、何かあれば2番手、とは言われていた。「やってやろうという気持ちに火がつき、緊張よりうれしさが勝った」。この大会でこれまで登板できたのは2回戦の1イニングだけだった。
ベンチにも一瞬、衝撃が走ったが、それでも落ち着いていた。高山大和主将(3年)は「堅田にも松浦と同じぐらいの力はあるはず、とみんな信じていた」と話す。
実際、堅田投手は明徳義塾打線と堂々と渡り合う。「松浦を甲子園に連れて行くため、絶対に点はやれない」とギアが入っていき、回を重ねるごとに球威は増した。八回表一死満塁のピンチには150キロ超の速球を連発し、最速151キロを記録。後続を三振、凡打に抑えた。
打線も奮起。相手の守備の乱れに乗り反撃を始めると、制球の定まらない明徳義塾のエース池崎安侍朗投手(3年)に球数を投げさせ、五回には死球押し出しで同点に。八回の適時打で決勝点となる1点を奪い取った。
高山主将は「ここまで来られたのは、ほぼずっと1人で投げてくれた松浦のおかげ。みんなで絶対、あいつを甲子園で投げさせると決めていた」と振り返る。
堅田投手はこの日、明徳義塾の最後の打者を含めて7奪三振。それでも自己評価は「四球が(四つと)多かったから70点か80点」。甲子園では「ストレートでどんどん押していく。もっと速い球も投げたい」。夢の舞台で、さらに上を目指す。(原篤司)