韓国で行われた男子のE-1選手権は、サッカー日本代表の優勝で幕を閉じた。最終戦では韓国代表に1-0で競り勝ったが、ライ…
韓国で行われた男子のE-1選手権は、サッカー日本代表の優勝で幕を閉じた。最終戦では韓国代表に1-0で競り勝ったが、ライバルの「底力」を見せつけられた。これまでも両国のサッカーは、代表チームはもちろん、国内リーグおいても競い合うことで、発展を遂げてきた。その「これまで」と「これから」を、サッカージャーナリスト後藤健生が現地リポートする!
■強かった「エンターテイメント性」
かつて何度もKリーグを取材に訪れたものだが、ここ10数年はKリーグ観戦に行っていなかった。ACLの戦いを見ても、かつてJリーグ・クラブにとって大きな壁だったKリーグ勢だったが、ここ数年は日本のクラブのほうが良い結果を残している。わざわざ行くほどの興味が沸かなかったのだ。
では、Kリーグはレベルが低下してしまったのだろうか? また、情報を追っていると首都ソウル以外の試合では、観客数が1万人を超えることがほとんどないようだった。Kリーグはプロ野球人気に完全に置いていかれてしまったのだろうか?
そこで、今回はせっかく韓国に行くので、久しぶりにKリーグの試合を観に行こうと思ったのだ。
7月18日には韓国第3の都市、大邱で大邱FC対金泉尚武(クムチョンサンム)、19日には浦項(ポハン)で浦項スティーラーズ対全北現代(チョンブクヒョンデ)モータースの試合を観戦した。
結論を言えば、どちらも思っていた以上にレベルが高かったし、激しい点の取り合いでエンターテインメント性の強い試合だった。このところ、守備戦術の徹底のせいか、得点数が減少する傾向にあるJリーグよりも派手な試合だった。
■珍しい「観客1万人」以上の上位対決
たしかに、フィジカル面を前面に押し出した、かつての韓国のサッカーとはだいぶ違った。
韓国代表もそうだが、今の韓国のサッカーは日本と同じようにパスをつないでビルドアップしようとする傾向が強まっている。つまり、戦術的にはJリーグとほとんど変わらない。
最近、Jリーグでは3バック(3-4-2-1)を採用するチームが増えているが、僕が観戦した試合のうち大邱と浦項はやはり3バックで戦っていた(尚武は可変システムで、全北は4-1-4-1だった)。
全北は前節終了時点で首位に立っており、浦項は4位。つまり、この試合は上位対決でもあったし、韓国の伝統あるチーム同士の一戦だった。さらに、浦項にはセルティックなどで活躍したベテラン奇誠庸(キ・ソンヨン)が移籍してきて初めての“顔見せ”の試合ともなった。
というわけで、この日は浦項スティールヤードには1万3973人の観客が集まった。前にも述べたようにソウル以外で1万を超えるのは珍しいことだ。
そして、その大観衆の後押しもあってホームの浦項が前半に2点を奪った。実際、45分を通じて浦項はゲームを支配していた。
■日本を苦しめた「代表FW」もゴール!
浦項のCFである李昊宰(イ・ホジェ)が守備時にはポジションを下げて、MFのキム・ドンジンと2人で挟みこむようにして全北のアンカーの朴鎮燮(パク・ジンソプ)をマークしたので、全北の4-1-4-1がまったく機能しなくなったのだ。
李昊宰はE-1選手権の日韓戦でもハーフタイムに交代出場し、後半、日本をさんざん苦しめたFWだ。前線でボールを収めるのがうまいし、強烈なシュート力を持ち、全北戦でも前半終了間際に後方からの浮き球を胸でコントロールして、見事に2点目のゴールを叩き込んだ。それでいて、相手のボランチをきちんとマークするという戦術的な役割もきちんとこなしたのだ。非常に優れたCFだ。
ちなみに、朴鎮燮も日韓戦ではCBとしてフル出場していた選手だ。
後半も立ち上がりには、全北は押しこまれ続けた。
だが、後半のなかばを過ぎる頃から朴鎮燮が最終ラインに下がって相手のマークを外すことで大きな展開ができるようになり、65分と80分のゴールで追いつき、追加タイムに相手のオウンゴールを誘って大逆転勝利して首位の座をしっかりキープした。
浦項対全北の試合は、そんな戦術的な駆け引きも見られる好試合だった。
■悪質な行為にも「笛が鳴らない!」
Jリーグと大きく違うのは当たりの強さや激しさだ。「さすが韓国」と言うべきだろう。
日本でも、Jリーグでは正当な「フットボール・コンタクト」を認めようという方向に動いており、激しい当たりで選手が倒れてもなかなかファウルを取らないようになっている。世界と戦うために必要なことだ。
その方針がやや行き過ぎて、最近は「今のはどう考えても反則だろう」と思うような接触でも笛が鳴らないことがあるが、そんな最近のJリーグと比べてもKリーグではさらに激しいプレーが多い。
いや、空中戦の競り合いで肘を使うとか、足裏を見せてのタックルといった危険なプレー、あるいは相手のシャツを引っ張るような悪質な行為にも笛が鳴らないのだ。