(27日、第107回全国高校野球選手権福岡大会決勝 九州国際大付1―10西日本短大付) 走者を背負っても動じない。甲子…

 (27日、第107回全国高校野球選手権福岡大会決勝 九州国際大付1―10西日本短大付)

 走者を背負っても動じない。甲子園を2度経験し、すごみを増したエースがそこにいた。

 一回表2死一、二塁。西日本短大付の中野琉碧投手(3年)は「ここで抑えて流れをつくる」とマウンド上でギアを入れ直した。2球目に選んだのはカットボール。狙い通り打者のバットの芯を外し、一塁ゴロに。この回を無失点で終わらせた。「流れをつくるには、あの回が大事だった」

 昨夏の3回戦は京都国際に0―4、今春の準々決勝は横浜に1―5。甲子園で、チームはともに優勝校に敗れた。劣勢でもあきらめない姿勢、ピンチでも動じない精神力に差を感じた。いずれの試合にも登板したエースはその悔しさを力に変えた。

 「初回を無失点で抑える」と決意して迎えた今大会。得意の変化球をいかした打たせて取る投球がさえた。この日も強打を誇る相手打線に12安打を浴びたが、走者を置いても最後まで平常心で投げ続けた。1失点で完投。マウンド近くにできた歓喜の輪の中で、ガッツポーズを繰り返した。

 計26イニングで与えた四死球は一つだけだった。安定感抜群の投球に、西村慎太郎監督は「丁寧に、丁寧に、ボールを低めに集めてくれた。自分に厳しく、エースの自覚を持ってやってくれた」と手放しでほめた。

 今大会は左腕の原綾汰投手(3年)と2人で全6試合を投げきり、失点はわずかに4。再び戻ってくると誓って、選抜では甲子園の土は持って帰らなかった。チーム一丸で「日本一」という目標に挑む夏はこれからだ。(山本達洋、佐々木凌)