<2025年全国高校野球選手権埼玉大会:昌平1x-0浦和実>◇25日◇準決勝◇県営大宮球場 石戸 颯汰(3年)擁するセン…
<2025年全国高校野球選手権埼玉大会:昌平1x-0浦和実>◇25日◇準決勝◇県営大宮球場
石戸 颯汰(3年)擁するセンバツベスト4の浦和実の夏が終わった。
石戸は今大会左肘の痛みとの戦いだった。初戦の富士見戦終了後、彼に聞いた時「いま状態は40%くらい。何とか9日後の4回戦までに間に合わせます」と言っていたが、4回戦も5回102球と正直厳しい出来だった。だが、前回の伊奈学園総合戦の1イニングでは1失点も直球の走りが戻りつつあった。
石戸の先発はその4回戦・滑川総合戦以来。
辻川監督も「石戸は最初、4回戦の浦和学院戦に照準を合わせて、その後は相手を見てこの準決勝でと」万全を期した。
迎えた今回の準決勝、強打の昌平打線相手にどこまでの投球ができるかが浦和実の鍵であったが、素晴らしい投球を披露する。
「今8割くらい。肘の完治はしていないので騙し騙しです。今日投げてみないとわからなかったが1,2回投げてみて行けるなと。スライダーも良かったですし、直球もある程度コースに行っていて。3,4番は四球を与えても良いくらいの気持ちで投げていた」(石戸)と、持ち味である制球力が冴え渡り、昌平打線を4回まで無安打無失点に抑え、諏江武尊(3年)はこの日無安打。主砲・櫻井ユウヤ(3年)も、ショートゴロ、三振と2打席目までは仕事をさせなかった。
だが、この日は打線が沈黙。「昌平の投手陣は打てそうで打てない。窪田くんはピッチングが上手。そして守りがうまい。石戸は本当によく投げていたから点を取ってあげたかった」(辻川監督)と、昌平・窪田竣介(3年)に前回とは別人のような投球をされ6回2死まで無得点に抑えられる。それでも7回に2番手・佐藤佑輝(2年)から1死一、三塁のチャンスを作ったが、浅い左飛に三塁走者がヒットと勘違いして飛び出し無得点に終わる。
「投げ込みができてないから終盤は親指の皮が剥けて」(辻川監督)と、7回くらいから石戸の制球もやや乱れ始める。
そして、両校無得点で9回裏、櫻井、大倉巧翔(2年)に連打を浴び1死一、三塁で中島航作(2年)を迎えた場面。「打ってくる可能性の方が高いと思っていたんですが。石戸は9回まで。タイブレークは角國へ継投。相手が送ったら駒木根って準備はしてたんだけど」(辻川監督)
「最後のスクイズの場面は相手が初球スイングしてきてスクイズの選択肢が抜けてしまって、相手の監督さんがうまかった」(石戸)と、指揮官、石戸共に悔やんだが、中島にセーフティースクイズを決められ万事休す。
この瞬間、サヨナラで浦和実業の春・夏連続出場と夏の甲子園初出場の夢は潰えた。
「絶対に甲子園に行くぞってやってたんだけどそう簡単に行ける場所じゃない。力はうちより昌平の方がある。4:6、3:7くらいかな。センバツベスト4と良い思いをさせてもらって感謝です。お疲れさんと言ってあげたい。石戸がいなければここまで行けていない。大学に行っても頑張って欲しい」と、指揮官は石戸を含め選手達を労う。
最後は「自分が思ったより成長できたかなと。大学では今日のような緊迫した状況でもゼロで抑えられる投手になりたい」と悔しさを滲ませつつ前を向いた石戸。
石戸に関しては昨夏から新人戦、昨秋、センバツそして今大会とずっと投球を見てきたが、結局、彼がそれなりの状態であれば攻略するチームは現れなかった。大学へ進学しても彼のミステリアスな投球は続くのか。注視して見守っていきたくなる投手だ。