<第107回全国高校野球選手権大会愛知大会:豊橋中央4―3愛工大名電>◇25日◇準決勝◇岡崎レッドダイヤモンドスタジアム…
<第107回全国高校野球選手権大会愛知大会:豊橋中央4―3愛工大名電>◇25日◇準決勝◇岡崎レッドダイヤモンドスタジアム球場
初めての決勝進出を目指す豊橋中央は、今大会に入って打線が好調だ。花井 成次選手(3年)、砂田 隆晴選手(3年)、注目の松井 蓮太朗捕手(3年)らのクリーンアップの破壊力は素晴らしく、ここまでは打ち勝ってきた。
2021年から3年連続で甲子園出場を果たすなど、令和に入って夏の愛知大会では最も多く優勝している愛工大名電。今大会はノーシードでもあり、1回戦から苦しみながらも、確実にここまで勝ち上がってきたのはさすがである。今年の愛工大名電は、相手を打ち負かすというよりは、礒田 桜士朗投手(3年)、岩田 知樹投手(3年)、鈴木 来雅投手(3年)という左右の安定した投手陣と、2人の1年生堀田 将大捕手と皆川 慧捕手らを中心として、手堅い守りで勝ち上がってきている。そんな対照的なチームの対戦となった。
決勝点は、3対3と同点の8回裏、豊橋中央が4番砂田選手の二塁打と2つの四球などで一死満塁としたところで、先発して、一旦は外野へ退き、再度リリーフした礒田投手の投球が暴投となってしまい、三塁走者が帰るという形のものとなってしまった。ナイター照明の中、手に汗握る熱戦の決着はこれで付いた。
9回に愛工大名電は二死から粘って2人の走者を出した。それでも、最後まで豊橋中央の先発した高橋 大喜地投手(3年)が投げ切って、最後の打者を渾身の力で打ち取った。
試合は序盤、豊橋中央が、先頭の近藤 瑠斗選手(3年)の二塁打と、5番松井選手のタイムリーで先制。さらに、2回も下位の高橋投手自身と長谷川 瑠選手(3年)の連続三塁打や、近藤選手の犠飛で2点を追加して、愛工大名電の好左腕と評判の磯田投手を攻めた。豊橋中央としては、「礒田投手を想定して徹底的に打ち込んできた」という成果も十分に示した。
そして、高橋投手がいいリズムで6回まで投げて、愛工大名電打線を4安打0点に抑えていた。しかし、さすがに愛工大名電もそのままでは終わらない。
7回、二死走者なしからマウンドを降りて右翼に入っていた5番礒田選手と清水 翔選手(3年)の連打と四球で満塁として、代打堀田選手の打球は二塁ゴロかと思われたが、遊撃手へトスしたタイミングがわずかに遅いと判定されてセーフ。その間に二塁走者も帰って1点差となった。
さらに8回、愛工大名電は二死二塁から代打岡本 力哉選手(3年)が右前打で返して同点とした。背番号2の岡本選手としては、大会に入って正捕手の座を2人の1年生に奪われた形になっていたので、ここで3年生としての意地を示した一打と言ってもいいであろう。
そして、その裏「自分が投げるしかない」という思いで再登板した礒田投手だったが、「力んでしまって、暴投になってしまった」という形で決勝点が入った。
初の決勝進出を果たした豊橋中央の萩本将光監督は「次のゲームを考えるとか、そういうことではなく、とにかく‟名古屋の私学4強を倒す”ということでやってきました。愛工大名電に勝ったのは初めてです。この大会でも、選手たちには、どこが相手でも下から押し上げていく気持ちで戦っていこうとずっと言ってきました。次は、春に負けている東邦ですが、同じ気持ちです。その先に甲子園というものがあるのですが、意識はしません」と、あくまでも、チームの目標は‟名古屋の私学4強を倒す”だ。
チームは、マウンド上でピンチに、相手のブラスバンドの演奏に合わせて体を揺すったりもしていた高橋投手に象徴されるように極めて明るい。初の決勝に登りつめたという変な緊張感はない。
自身も‟名古屋の私学4強”の一つ、中京大中京の出身の萩本監督だが、今は、‟打倒私学4強”の旗頭として、初優勝を目指す。