夏の地方大会も甲子園出場校が続々と決まり、ラストスパートに入った。 この時期、話題となるのはスーパー1年生の存在だ。選手…
夏の地方大会も甲子園出場校が続々と決まり、ラストスパートに入った。
この時期、話題となるのはスーパー1年生の存在だ。選手の入れ替えができて、甲子園に直結する大会ではない春季大会では、お試しで入ることはあるが、夏の大会は入れ替えができず、さらに甲子園に直結する大会であるため、ベンチ入りの難易度は高い。起用される選手たちは実力で掴み取った。
この夏、地方大会で輝いた1年生たちを紹介したい。
投手では横浜がスーパー1年生左腕がデビュー
春夏連覇を狙う横浜は左腕・小林 鉄三郎投手がデビューした。中本牧シニア時代は春の選抜大会優勝に貢献。春の県大会からベンチ入りし、公式戦登板も経験したが、夏は初戦の荏田戦で先発。4回を投げ、7奪三振、無失点。中学時代に比べストレートが力強くなり、130キロ後半の速球を投げ込んでおり、村田監督も「将来の横浜を背負う投手」と期待を寄せている。小林と同じ中本牧シニア出身の鈴木 陽仁投手(桐光学園)は全4試合に登板し、リリーフで好投を見せている。130キロ台の速球、スライダー、カーブを器用に投げ分ける好左腕で、中学時代から光っていた制球力の高さ、投球術の上手さは健在。修羅場を経験しており、この秋はエース格として活躍が期待できる。
千葉の古豪・銚子商では、鈴木 直磨投手の将来に期待したい。180センチ70キロと細身だが、しなやかな腕の振りから繰り出す130キロ台の直球はキレがある。この3年間で県内を代表する左腕へ成長できるか注目だ。千葉で準決勝に進出した中央学院の神永 彪真投手はまだ細身であるが、しなやかな腕の振りから繰り出す130キロ前半の速球はキレがある。中央学院はフィジカルを徹底的に強化するチームのため、高校3年間で大きく球速アップが期待できる。
東東京では成立学園の右腕・横山 和也投手は4回戦の帝京戦で6回1失点の好投。まだ球速は130キロほどだが、制球力が高く、カットボールの精度も高い。投球術が上手く、球速アップが成功すれば、さらに打たれにくい投手になりそうだ。二松学舎大付の左腕・川島 連十投手はオリックス・川島慶三コーチの次男で、東東京の開幕戦で先発登板し、5回参考記録ながらノーヒットノーランを達成した。
小路 瑛主投手(星稜)は準々決勝の日本航空石川戦で先発起用された好左腕。すでに最速140キロを計測している。180センチ80キロとサイズにも恵まれており、2年後のドラフト候補に挙がりそうだ。
大阪学院大では春から注目を浴びた林 将輝投手がこの夏は投打で活躍を見せた。140キロ中盤の速球はキレがある。投球フォームはダルビッシュ有投手を彷彿とさせるような合理的な動きをしており、3回戦の北かわち皐が丘戦で、2回5奪三振、打者としても3打数2安打を記録した。
創志学園の坂下 虎太朗投手は183センチの長身から140キロ台の速球を投げ込む期待の大型右腕。打撃力も高く、この3年間でどれだけ伸びるか。
九州国際大付の岩見 輝晟投手は期待の大型左腕だ。ヤング志免スピリッツ時代から13キロ中盤の速球を投げ込む逸材として、福岡県だけではなく、全国多数の強豪校から誘われる存在だった。地元の九州国際大付に進み、1年春のローカル大会から起用されると、夏は外野手を兼任しながら、5回戦の祐誠戦では4.1回を投げ、1失点の好投を見せた。
浦野 慶臣投手(福岡大若葉)は、5回戦で西日本短大付戦で先発し、8回途中まで2失点の好投。スリークォーター気味から130キロ後半の速球を投げ込んでいる。
「1年生だと気づかない」ほどの実戦派野手
野手は、実戦派の選手が多い。ある野球関係者は「名簿を見なければ1年生だと分からないぐらい落ち着いてプレーしている1年生が多い」と評するほどだ。
まず神奈川県ではベスト16敗退の桐光学園が3人の1年生をスタメン起用した。1番サード・小田倉 優真内野手、4番ファースト・周東 希虎内野手、9番キャッチャー・峯岸 鷹捕手の3人だ。小田倉は中本牧リトルシニア時代から評判の好打者で、バットコントロールの良さと堅実な三塁守備を見せている。周東は東京城南ボーイズ時代から強打者として活躍。逆方向に強い打球が打てる打撃技術は秀逸で、構えや打席の雰囲気はソフトバンクの近藤健介外野手(横浜)を彷彿とさせる。峯岸はキャッチング、リード、立ち居振る舞いなど1年生とは思えないほど完成度が高い。タイプが異なる野手3人がいるのは大きい。
群馬では県内を代表する健大高崎、前橋育英の両校に1年生が出場している。健大高崎は、神崎 翔斗内野手がサードでスタメン出場。大会初戦では本塁打を放った。高い守備力とミートセンスの高い打撃が魅力だ。
前橋育英はU-15代表の主将として活躍した新井 悠河内野手が3番セカンドで出場し、準々決勝の桐生市商戦で本塁打を放ち、チームの主力として活躍している。
仙台育英は、春から起用されてきたショート・砂 涼人内野手、セカンド・有本 豪琉内野手の二遊間は経験を重ねて、打撃でも結果を残すようになった。準決勝の仙台一戦では、有本は4打数2安打、砂は2打数1安打1打点と活躍を見せる。守備力が非常に高く、投手をしっかりと盛り立てている。
慶応では湯本 琢心投手が目を惹いた。春日部ボーイズ時代から注目を浴びた大器は、1年夏からデビューを果たし、2回戦の慶応藤沢戦で先発デビューし、3回3奪三振、無失点の快投を見せ、1回戦、2回戦で長打を記録している。腰が座った構えから鋭い打球を飛ばしており、今後の神奈川を担う強打者に成長しそうだ。
千葉県では石塚 太惺内野手(八千代松陰)がサード、ショートでスタメン起用された。石塚は巨人ドラ1・石塚 裕惺内野手(花咲徳栄)の弟である。まだ打撃が課題だが、落ち着いて打球を裁く守備力の高さは非凡なものがある。
東京では名門・帝京で目代龍之介外野手がスタメン起用された。八戸智徳シニア時代から投打ともに注目され、186センチ88キロと堂々たる体格が魅力で、豪快なスイングを見せる。目代を起用する金田 優哉監督は「打撃も素晴らしいパワーをしていますし、肩、足も素晴らしいものをもっています。今後の帝京を担う選手です」と期待を寄せる。課題はコンタクト力。まだ硬さが見られ、5打数0安打に終わった。東東京を代表する右のスラッガーに成長する可能性は十分にある。
愛知県では名古屋たちばなの萩迫 裕貴内野手が1番セカンドとして出場。バットコントロール、俊足を兼ね備えた好打者で、2回戦では今年の高校生NO.1左腕・芹澤大地投手から2安打を記録し、速球投手に振り負けない打撃ができていた。神達 大武内野手(中京大中京)は代打ながら高い打撃センスを発揮し、準々決勝の名古屋たちばな戦も逆転のきっかけを作る安打を放った。豊橋中央の中立大翔内野手は主に5番ファーストで起用され、準々決勝の杜若戦では148キロ右腕の長塚陽太投手から2安打を記録した。
センバツ準優勝の智弁和歌山は3番を打つ井本 陽太外野手の評価が高い。投手も兼任するが、ここまでは打撃力の高さを発揮している。準々決勝・市和歌山戦では150キロ右腕・丹羽 涼介投手から強烈な三塁打を放ち、先制点を呼び込んだ。強打の左打者として打線に勢いをつけたい。3年連続出場を狙う智弁学園はU-15代表を経験している太田 蓮外野手が5番センターでスタメン起用されている。走攻守ともに能力が高く、3回戦の奈良戦で3打数2安打の活躍を見せる。智弁学園は1、2年生が多く起用されており、新チーム以降も注目が集まる。
近江の杉浦 憂志朗内野手は準々決勝の立命館守山戦で逆転に成功する適時二塁打を放った。走攻守ともにバランスが取れた実戦力の高いプレイヤーで、首脳陣の評価も高い。
大分の名門・明豊の川口 琥太郎内野手はこの夏も不動のショートとして出場している。迫力のあるスイングから繰り出される打球は強烈だ。九州国際大付は大型左腕・岩見 輝晟以外の1年生も出場しており、吉田 秀成内野手は6番ショートでスタメン出場しており、ミートセンスの高い打撃、安定感の高い守備を披露している。
2年連続出場を狙う創成館は中学時代からスラッガーとして注目されてきた古賀 瑠樹内野手が3番ファーストで出場している。初戦から3試合連続で安打を記録している。