神奈川大会は26日、横浜スタジアム(横浜市中区)で準決勝2試合が行われる。春の選抜を制した横浜と対戦するのは、3年ぶり…
神奈川大会は26日、横浜スタジアム(横浜市中区)で準決勝2試合が行われる。春の選抜を制した横浜と対戦するのは、3年ぶりに4強入りした立花学園。連覇を狙う東海大相模と向上の対戦は、昨夏の準決勝と同一カードとなった。172チームから勝ち上がった4強の特色を、キャッチフレーズとともに紹介する。
(各チームの戦績の丸カッコはコールド勝ちした回)
■横浜「緻密に」
横浜が掲げるのは「緻密(ちみつ)な野球」だ。守りからリズムをつくり、ノーヒットでも1点取れる野球を指す。
春夏合わせて5回全国制覇した名将・渡辺元智さんの時代から続く伝統で、当時の教え子だった村田浩明監督が受け継いだ。
神奈川大会でも、この伝統が機能した。
藤嶺藤沢戦では、二塁手の奥村凌大選手(3年)や遊撃手の池田聖摩選手(2年)が、内野を抜けそうな打球を次々好捕した。六回には、中堅手の阿部葉太主将(3年)が打球をダイビングキャッチ。藤嶺藤沢の菊地幹監督は「転んででも捕ったり、球際で捕ったり。ひとつミスが出れば違う展開になったが、ミスが出ない」と横浜の守備力を評価した。
危なげなく勝ちすすんできた横浜だが、準々決勝では平塚学園に九回2死まで追い詰められた。阿部主将が逆転適時打を放ってサヨナラ勝ち。薄氷の勝利だった。
村田監督は試合後、「求めていた野球が初めてできた。逆境を押し返す練習をしてきた」と話した。選手たちが試合に勝って涙を流すのは初めてのことだという。
試練を乗り越えた選抜王者が、3年ぶりの夏の甲子園、そして27年ぶりの春夏連覇を狙う。
◆横浜の戦績
2回戦 16―0 荏田(7回)
3回戦 7―0 川崎北(7回)
4回戦 9―0 相模原城山(7回)
5回戦 4―0 藤嶺藤沢
準々決勝 5―4 平塚学園
■立花学園「ワイルドに」
立花学園のスローガンは「ワイルドにいこう」。準々決勝までの5試合で69得点をあげた積極的な攻撃が売りだ。
今のチームについて、志賀正啓監督は「良くも悪くもおとなしい子が多い」。技術が高く堅実なプレーを見せる一方、勢いが足りないと考えて、年始からこの言葉を掲げている。
方針が奏功したのは準々決勝。八代晄太選手(2年)が逆転満塁本塁打を放った。中高を通じて、柵越えは初めてだという。
八代選手は打撃が不調で悩んでいた。打席に入るとき、志賀監督は「バカになれ。思い切り振ってこい」と声をかけた。八代選手は「雑念を捨てて積極的に攻められた」と振り返る。
横浜には春の県大会準々決勝で敗れた。志賀監督は「なるべく失点は防ぎたいが、そうならなかったら打ち合いに持っていくしかない。自分たちにできることをやる」と意気込む。
持ち前の積極打法で、盤石の横浜投手陣を迎え撃つ。
◆立花学園の戦績
2回戦 27―0 県川崎(5回)
3回戦 11―1 横浜翠嵐(5回)
4回戦 17―0 光陵(5回)
5回戦 9―2 横浜隼人(7回)
準々決勝 5―4 藤沢翔陵
■東海大相模「頭は冷静に」
東海大相模が掲げるのは「ファンクショナル・ベースボール(機能的な野球)」。選手全員が作戦への理解を「意識がつながっている状態」まで高めて、戦況に沿って守備や打撃を行っていく。
故・原貢さんの時代から続く攻撃的野球が伝統だ。前任の門馬敬治さんのもと、「アグレッシブ・ベースボール」として広く世に知られた。それを土台に、原俊介監督は「心は熱く、頭は冷静に」と伝える。「積極的な姿勢は大事だが、冷静に状況判断もできないといけない」
法政二との5回戦では、0―0で迎えた二回表、四球、犠打、死球でチャンスをつくり、3安打などで一挙5得点。「機能的な、つながる野球」を体現した。
守備でも9人が状況に応じて連係して、横浜に並ぶ最少4失点で来た。右ひじのけがから復帰したエース福田拓翔投手(3年)が準々決勝でこの夏初めて先発した。完全復活すれば、さらに守備の厚みが増す。
次戦は向上戦。原監督は「今回も苦しい戦いになると思う。ゲームセットまでベストを出す」。
◆東海大相模の戦績
2回戦 12―0 横須賀工(5回)
3回戦 11―0 高浜(5回)
4回戦 12―0 横浜南陵(5回)
5回戦 9―2 法政二(8回)
準々決勝 5―2 日大
■向上「すべての力を」
2年連続4強入りした向上は「ALL OUT すべての力を出し切ろう」を掲げる。
昨夏の準決勝、東海大相模を相手に終盤までリードするも、八回裏に逆転を許し、僅差(きんさ)で敗れた。新チームは、秋の県大会準々決勝で横浜隼人に、春の県大会4回戦では立花学園に、いずれも1点差で惜敗した。以来、「勝ちきる」ことを求め、ランナーを置いてノックを行うなどの実戦を想定した練習を積んできた。
金沢佑飛(3年)、大友敦裕(3年)、寒河江佑也(2年)の3投手を中心に継投する。守備力や走力といったメンバー20人の長所を生かして役割分担し、「総力戦で勝負する」(平田隆康監督)。
例えば、準々決勝の日大藤沢戦では、守備固めの一塁手として出場した鈴木陽之選手(3年)が、飛び出した一塁走者をタッチアウトにする好守備を見せた。
神奈川大会では、相模原や相洋との接戦を制し、激戦のブロックを勝ち上がってきた。
次は、昨夏惜敗した東海大相模との再戦となる。主軸を担う古知屋航平選手(3年)は「先輩の涙を見た悔しさを今も覚えている。リベンジしたい」と意気込む。
創部60年の今年、悲願の甲子園初出場を目指す。
◆向上の戦績
2回戦 10―0 橋本・愛川・中央農(6回)
3回戦 5―3 相模原
4回戦 10―0 横須賀大津(6回)
5回戦 3―2 相洋
準々決勝 13―4 日大藤沢(7回)