阿部ら有望株の進路が注目されている(C)産経新聞社 夏の高校野球地方大会もいよいよ佳境にさしかかりました。ネット裏で逸材…

阿部ら有望株の進路が注目されている(C)産経新聞社

 夏の高校野球地方大会もいよいよ佳境にさしかかりました。ネット裏で逸材を視察するNPBスカウトの方々にとっても、7月は炎天下での視察となり、一番の繁忙期です。体力を削られながら、高校生のドラフト候補の見極めに、東奔西走する季節です。

【関連記事】7回制なら横浜は平塚学園に負けていた 高校野球の「醍醐味」終盤の攻防は消えてしまうのか

 そんなNPBスカウトの方々に今夏の高校生について話を聞くと、異口同音に苦しい胸の内を語ってくれました。

「高校生はドラフト候補としての絶対数が少ない印象です。育成なら…という選手はそこそこいますが、支配下となるとちょっと寂しいかな。というのも、本当に欲しい二人の選手が早々に、プロ志望届を提出しない方針を明らかにしていますしね」(パ・リーグ球団スカウト)

 その二人とは、高蔵寺(愛知)の最速151キロサウスポー・芹澤大地と、今春の選抜甲子園大会で横浜を優勝に導く原動力となった横浜のキャプテン・阿部葉太外野手です。

 前述のスカウトは続けます。

「芹澤は今ほど騒がれていなかった頃から、将来性に注目して入社を勧めてくれた経緯もあり、名門の社会人チーム入りを希望していると聞いています。阿部も推薦で名門大学へ入学する方向性との話です。二人ともドラフト1位になっても不思議ではない評価ですが、我々プロ側はアマ側との信頼関係もあり、進路が決まっている選手には、なかなか割って入れないのです。芹澤は3年後、阿部は4年後のプロ入り解禁を待つしかないでしょう」

 チーム強化へどうしても欲しい有望株ならば、摩擦を恐れずに「逆転獲得」を狙うのも一つの手かと思いがちですが、事態はそんなに簡単ではないと言うのです。

「もう10年以上前になりますが、ある大学生の有望投手が名門社会人チームに内定し、NPBスカウトはならばと手を引いた。しかし、果敢に指名したある球団は数年後、その投手の活躍もあって、日本一に輝いたんです。それでも『強行指名』によって顔が潰された人、立場が危うくなった人がいたのも事実。『虎穴に入らずんば虎児を得ず』は確かに真理ですが、窓口となる担当スカウトはいばらの道かもしれません。野球界は狭く、信頼関係で成り立っている世界ですからね」(スポーツ紙記者)

 それほど注目されていない選手の中に、いかに隠れた才能を秘めた逸材を見つけられるか。秋のドラフト会議まで、スカウトの奮闘は水面下で続いていきそうです。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

【関連記事】甲子園常連校 スカウティングのボーダーレス化が加速 関西から関東、関東から関西へ その背景とは

【関連記事】もう止まらない「高校野球7回制」への流れ 酷暑対策に打つ手なし

【関連記事】高校野球に進んだ「スーパー中学生」が必ずしも「スーパー高校生」にならない理由とは