(25日、第107回全国高校野球選手権山口大会準決勝 南陽工5―4宇部商、延長十二回タイブレーク) 延長タイブレークの十…

(25日、第107回全国高校野球選手権山口大会準決勝 南陽工5―4宇部商、延長十二回タイブレーク)

 延長タイブレークの十二回裏、2死二塁。昨夏の代表校に1点差に迫る仲間を、宇部商のエース藤田琉平投手(3年)はベンチで祈るように見守った。「頼む。絶対に逆転してくれ」

 「偉大な父」を越えるために、甲子園に行きたかった――。

 父修平さん(43)は、宇部商のエースとして1998年夏の甲子園に出場した。豊田大谷(愛知)との2回戦。延長十五回の末、「サヨナラボーク」で敗退した。

 父の悔しさは、同じエースの立場になると、よくわかった。甲子園の2回戦突破が夢になった。

 今大会は救援が多く、この日も六回からマウンドへ。ところが、投球練習中に左足をひねり、制球に苦しんだ。勝ち越しを許した後、九回表からベンチに下がった。

 3年間、父はコーチとして支えてくれた。「味方がエラーしても決して態度に出すな」「冷静になって仲間に声をかけろ」。エースの心構えを学んだ。

 最後の打者が三塁ゴロに倒れた。同じ舞台には立てなかったけれど、父に伝えたい。「いままで本当にありがとう」