(25日、第107回全国高校野球選手権大会西東京大会準々決勝、国士舘4―3早稲田実) 甲子園優勝の夢はかなわず、陽炎(か…

(25日、第107回全国高校野球選手権大会西東京大会準々決勝、国士舘4―3早稲田実)

 甲子園優勝の夢はかなわず、陽炎(かげろう)の中で天を仰いだ。早稲田実のエース中村心大(3年)は、神宮球場の三塁側コーチスボックスで幕切れを迎えた。「最後は何もできなかった。悔しい」

 2006年夏の甲子園で、斎藤佑樹投手を擁して優勝した早稲田実にあこがれた。生まれる前年のことだが、テレビで流れる当時の映像を繰り返し見たという。

 新チームで主将となり、昨夏に続いて今春も甲子園のマウンドに立った。しかし、2回戦で聖光学院(福島)に打ち込まれて降板。「最後の大会は自分の手でなんとかしよう」と思った。

 5回戦で完封し、この日も先発を任された。140キロ超の力強い直球で国士舘打線を圧倒し、6回までは被安打2本に抑えた。だが、終盤には球威が衰え、失投も目立った。

 八回、暴投で1点を失った。なおも2死満塁のピンチが続く中、左打者の外角低めに直球を決めた。空振り三振。和泉実監督と相談して、九回表のマウンドは中島颯之介(3年)に譲った。「実は三回に指のまめがつぶれていた。仲間を信じて下がった」

 逆転をゆるした後の九回裏の攻撃。中村は「自分ができる精いっぱいの仕事をしたい」と、志願してコーチスボックスへ。打席に立つ仲間に全力で声援を送り、笑顔を向けた。

 試合後、和泉監督は「中村頼みのチームで、打線が援護できなかった」と振り返り、「こういうことも今後の糧にしてほしい」と期待を寄せた。中村は目を赤くして言葉を絞り出した。「いい時も悪い時も支えてくれた仲間には感謝しかない。そう思うと、やっぱり勝ちきりたかった」=神宮(上保晃平)