(25日、第107回全国高校野球選手権岡山大会準決勝 玉野光南0―7おかやま山陽=八回コールド) 3点をリードされた四回…

(25日、第107回全国高校野球選手権岡山大会準決勝 玉野光南0―7おかやま山陽=八回コールド)

 3点をリードされた四回裏、先発から継投した玉野光南エース左腕、石井稜馬(りょうま)投手(3年)は投球前、マウンドから斜め上を見た。視線の先には青い空。「お母さん、見ていてね」

 母親を亡くしたのは中学3年の冬。試合をよく見に来てくれていた。投手として活躍すると、笑顔を見せてくれた。「優勝して家族を甲子園に連れて行く」。最後の夏の目標になった。

 継投後の最初の打者には、140キロ近い自慢の直球で空振り三振。次打者には外角への変化球で再び空振り三振を奪うなど、三者凡退に抑えた。おかやま山陽は2年前の準決勝でもぶつかり、登板したが打たれ敗戦した相手。リベンジにも燃えており、準々決勝までの3試合よりも制球よく投げられていると自分でも感じていた。

 今大会はけが明けだった。3月下旬の練習試合で腰を痛め、春の公式戦には出られず。腰に負担がかからない体幹トレーニングや走り込みを黙々と続け、夏に備えた。

 しかし六回裏の50分の中断後、安打を許し失点。八回には制球を乱すなどしてピンチを招き、最後はスクイズにエラーが加わり敗戦した。

 溝口大翔(やまと)捕手(3年)は「稜馬が主体のチーム。一緒に甲子園には行けなかったが苦しい時も一緒にやってきて後悔はない」と感謝。石井投手は「相手の狙う球をそのまま投げてしまった」と後悔を口にした。

 夏が終われば、プロ志望届を出すことも考えたが「万全ではない状態で出しても通用しない」と考えを改めた。次のステージで投球を磨き、評価されてプロになる。そして今度こそは空の上のお母さんにいい報告をしたい、と思っている。(上山崎雅泰)