横浜は9回二死二、三塁のチャンスで逆転2点2塁打を放った(C)産経新聞社 激戦区・神奈川で行われた熱闘に、高校野球を愛す…

横浜は9回二死二、三塁のチャンスで逆転2点2塁打を放った(C)産経新聞社
激戦区・神奈川で行われた熱闘に、高校野球を愛する人々が胸を熱くしました。
7月22日、サーティーフォー保土ヶ谷球場で行われた第107回全国高校野球選手権、神奈川大会の準々決勝、横浜VS平塚学園の一戦です。
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今春の選抜甲子園大会を制した優勝候補の本命・横浜ですが、4回を終えて0-4の劣勢。しかし、じわじわと追い上げます。1点差に迫り、迎えた9回二死二、三塁のチャンスで、主将の阿部葉太(3年)がフルカウントから、右中間にフェンス直撃の逆転2点2塁打を放ち、死闘に終止符を打ちました。
「あと1球」で夏が終わる土壇場からの一打で、横浜が首の皮一枚、残ったのです。
現地で取材した高校野球取材歴の長いライターは言います。
「両チームの意地と意地がぶつかった素晴らしい試合で、ゲームセット後も満員の客席からは両者をたたえる拍手が鳴り止みませんでした。そしてあらためて思ったんです。両チームが体力的にギリギリの場面にさしかかった8回、9回の攻防こそ、高校野球の醍醐味なのだと。もしこの試合が7回制で行われていたら、平塚学園が普通に4-2で勝って、横浜の夏は終わっているでしょうから」
日本高野連は夏の酷暑対策として、「高校野球7回制」への議論を進めています。6月30日には7回制についてのアンケートを公式ホームページ内でスタートし、幅広く一般層の高校野球ファンにも意見を聞くなど、実現の可能性について検討を重ねています。
「日本高野連と朝日新聞社が安心安全な大会運営のため、7回制の検討がやむを得ない事態であることは理解できます。しかしそれでも、高校野球の醍醐味は、両チームの心身が削られる中で行われる終盤の攻防です。真夏の終盤にしっかりとプレーできるフィジカルとメンタルを目指して、高校球児は冬場の厳しいトレーニングに耐えているんです。この8、9回がなくなってしまうと、野球という競技の本質が変わってしまわないか。それを危惧するんです」(前述のライター)
一方で、「それでも7回制導入への流れは止まらない」と、あるスポーツ記者は現状をこう分析します。
「タイブレークが導入される前も『そんなの野球じゃない』との議論がありましたが、要は慣れです。高校野球の国際試合は7回制で行われていますが、スピーディーで特に違和感は覚えません。だいたい序盤に先制点を取ったチームが勝つという傾向は強くなりますが(笑)。9回から7回に短縮されれば、自ずと熱中症のリスクは軽減されます。でも、7回制はあくまで熱中症対策ですから、夏を除く公式戦はしっかり9回制でやるなど、柔軟な対策が必要だと思いますね」
9回制堅持か。7回制導入か。高校野球を愛する人々の間で、議論はまだまだ続きそうです。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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