(24日、第107回全国高校野球選手権岩手大会決勝 花巻東8―4盛岡大付) 前年と同じ顔あわせとなったこの決勝。花巻東の…
(24日、第107回全国高校野球選手権岩手大会決勝 花巻東8―4盛岡大付)
前年と同じ顔あわせとなったこの決勝。花巻東の強力打線が、ライバル盛岡大付をのみ込んだ。
五回、先頭が二塁打で出塁し、相手のミスに乗じて1死二、三塁。2打席凡退だった4番古城大翔は「良いイメージだけ考える」と右打席へ向かった。
1ボールからの甘い変化球を見逃さず、自慢の木製バットで捉える。鋭いライナーを左前に運んだ。この試合初の適時打を皮切りに4連打。一挙6得点で、試合の大勢を決めた。
今春の選抜大会は打力を武器に8強進出。しかし、5月の県大会は初戦敗退を喫した。古城ら中軸の不調が敗因の一つだった。
古城は「ヒットも出ないし、三振も増えていた」。焦れば焦るほど、打球は遠くまで飛んでくれなかった。
ベンチ入りメンバーを外れた選手たちに、夜遅くまで打撃投手をしてもらったり、ティー打撃に付き合ってもらったりした。外野の間を抜くライナー性の打球の延長線上に、本塁打があると気づいた。
あえて甲子園を意識せず、「一戦必勝」で臨んだ今大会。古城は1本塁打を含む打率5割超、9打点の活躍で打線を引っ張った。6試合中4試合をコールドで制し、初の大会3連覇を達成した。
古城は1年生だった昨夏の甲子園でも、4番を任された。滋賀学園相手に0―5で初戦敗退。2安打を放ったが、それでも悔し涙が止まらなかった。声を詰まらせながら応じた取材で、反省と決意の言葉を語っていた。
「足元にも及ばなかった。チームを引っ張る存在になりたい」
あれから1年。古城は甲子園切符をつかんだこの日も、泣いていた。先輩たちが笑顔で勝利をたたえ合う中、ただ一人、顔をぐちゃぐちゃにした。重圧を乗り越え、解き放たれた瞬間だった。
「去年(の決勝の後)はこんなに泣いていない。大会が始まる前は不安な気持ちが本当にあった。(優勝しても)涙が出るほどじゃないと思っていたんですけど、涙が出るほどうれしかったです。大会前にあった不安や焦りが、今では夏の結果につながっていたと思えます」
プロ野球・巨人などで活躍した茂幸さんを父に持つスラッガー。心身ともに成長し、1年前とは違う涙を流した。(大宮慎次朗)