首位を快走する阪神。藤川球児新監督の下でのチームビルドアップがここまで完全に機能している(C)Getty ImagesA…

首位を快走する阪神。藤川球児新監督の下でのチームビルドアップがここまで完全に機能している(C)Getty Images
Aクラスを争う阿部巨人への評価は辛く
前半戦が終了し、いよいよレギュラーシーズンも後半戦に突入していく今年のプロ野球。セ・リーグ、パ・リーグともに徐々に上位チームと下位チームの差は開きつつあるが、ここで改めて、各球団の前半戦の戦いぶりを「大変よくできました」、「よくできました」、「まずまず」、「頑張りましょう」の4段階で評価したい。今回はセ・リーグの6球団を見ていく。
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1位:阪神/大変よくできました
2位に9.5ゲーム差をつける圧倒的な首位という結果から迷うことなく最高評価とした。
チーム防御率は驚異の1.99と先発、リリーフともに強力。打線も1、2番コンビの近本光司、中野拓夢から中軸を打つ森下翔太、佐藤輝明、大山悠輔がしっかり機能し、得点力も高い。現時点で投打ともに穴は見られない。
後半戦に向け、グラント・ハートウィグとラファエル・ドリスという新外国人も補強するなど、有事への備えも感じられる。このまま2年ぶりの優勝を果たす可能性は極めて高いと言えるだろう。
2位:DeNA/まずまず
借金1という数字は褒められたものではないが、2年ぶりに復帰した大物助っ人トレバー・バウアーの調子が上がらず、主砲のタイラー・オースティンも離脱している中でのこの成績ということで「まずまず」と評価した。
チームの原動力となっているのがアンドレ・ジャクソン、アンソニー・ケイ、ローワン・ウィックの外国人投手。いずれも球速は圧倒的でありながら、昨年と比較して制球力も向上。日本球界にアジャストし、なお進化しているのは頼もしい。
一方で打線も苦しんだ時期こそあったが、牧秀悟、佐野恵大の2人が安定しているのが何よりも強みだ。藤浪晋太郎、デヤン・ビシエド、マイク・フォードが加わった後半戦で、バウアー、オースティンが調子を上げてくればAクラス入りの可能性は高い。
3位:巨人/頑張りましょう
セ・リーグ連覇を目指してオフには中日からライデル・マルティネスを獲得するなど積極的な補強を見せたが、ここまでは苦しい戦いが続いている。
大きな誤算だったのが、「エース」として期待された戸郷翔征の不調と、主砲の岡本和真の怪我による長期離脱だ。特に岡本はいまだに実戦復帰の目途が立っておらず、このままシーズンを終える可能性もある。
緊急トレードで補強したリチャードも3本塁打は放っているものの、打率は1割台前半と岡本の穴を埋めることはできていない。リーグ連覇は風前の灯火で、Aクラス入りも危うい状況と言えるが、後半戦でいかに巻き返すかは興味深い。
主砲・村上宗隆を欠いたヤクルトが深刻な点は…
4位:中日/頑張りましょう
今季から昨年二軍で実績を残した井上一樹新監督が就任したが、課題の得点力不足は解消されずBクラスに沈んでいる。4番として期待された石川昂弥が不振で二軍暮らしが続き、昨年ブレイクした福永裕基も怪我で戦力になっていない。エースとして期待された高橋宏斗が3勝8敗と大きく負け越しているのも誤算だ。
それでも前半戦の最後には7連勝を記録するなど、何とかAクラス争いには食らいついている。上林誠知の復活や、好投を続けている大型新人・金丸夢斗など明るい材料もあるだけに、まだ巻き返しの可能性はありそうだ。
5位:広島/頑張りましょう
苦手の交流戦を5割で乗り切ったところまでは順調だったが、そこから一気に失速して5位に沈んでいる。
大きな誤算は栗林良吏、テイラー・ハーンの不調だ。シーズン開幕後に役割を入れ替えたが、いまだに勝ちパターンは確立できていない。また打線も新外国人のサンドロ・ファビアンが好成績を残しているものの、全体で見れば、上手く噛み合っていない印象が強い。昨シーズンも夏場以降に急失速しているが、今季は早くも、その状態に陥っているように見える。投手も野手も新たな戦力の上積みがなければ、今年もAクラス入りは難しくなりそうだ。
6位:ヤクルト/頑張りましょう
5位の広島に7.5ゲーム差をつけられて最下位に沈んでいる。投打ともに苦しんだチームにあって、大きな足かせとなったのは、主砲の村上宗隆の長期離脱だ。今オフのメジャーリーグ挑戦を明言していた若き大砲は、一度戦列に復帰したもののわずか1試合で再発。いまだ本格的な一軍復帰を果たせていない。ただ、投手も野手も他の5球団と比べて明らかな戦力不足は否めず、村上が万全だったとしてもAクラス争いに加わっていた可能性は低いのではないだろうか。
さらに深刻なのが二軍も成績が低迷しているという点だ。将来が楽しみな若手も少なく、ここ数年のドラフトが機能していないことは一目瞭然。来季は村上もメジャー移籍が有力視されるだけに、現時点から何とか新たな戦力を発掘したいところだ。
[文:西尾典文]
【著者プロフィール】
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。
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