(24日、第107回全国高校野球選手権山形大会準決勝 日大山形12―5酒田南)  逃げない。酒田南の捕手、前田力吉丸(…

 (24日、第107回全国高校野球選手権山形大会準決勝 日大山形12―5酒田南)

  逃げない。酒田南の捕手、前田力吉丸(りきまる)主将(3年)は決めていた。

 「野球は失敗の多いスポーツ。でも、消極的になったら、成長できない。失敗を乗り越えて、成長していきたい」

 その思いを込め、捕手としてサインを出した一球があった。

 八回、5―8と劣勢の場面。前の打席まで2安打の4番、佐藤塁選手を先頭に迎えた。2球目、内角に構えた。佐藤選手が得意なコースだ。前田主将の胆力には、相手ベンチも目を見張った。

 「外へ逃げて、しのぐことはしたくない。気迫で押していかないと、相手にのまれる」

 センター前に打たれた。その安打を起点に、さらに3点を奪われた。

 だが、悔いはない。

 「気持ちで負けたら終わりだったので。サイン通りに思い切って投げてくれた投手と、自分についてきてくれたチームメートに感謝したいです」

 生まれたとき、体が小さめだった。「力強く成長してほしい」との願いで、「力」の字を入れて命名された。その名にふさわしく、失敗を恐れない力強さと、立派に成長した姿を印象づけた。(渡部耕平)