(24日、第107回全国高校野球選手権青森大会決勝 弘前学院聖愛6―5八戸学院光星) 九回表に大逆転。しかし、その裏に…

 (24日、第107回全国高校野球選手権青森大会決勝 弘前学院聖愛6―5八戸学院光星)

 九回表に大逆転。しかし、その裏には大ピンチが待っていた。

 表の攻撃で投手に代打が送られたため、この回から登板したのは背番号18の前田一樹投手(3年)。原田一範監督からは「楽しんでこい」と言われたが、そんな余裕はなかった。ブルペンから緊張していた。心の中で「落ち着け」と繰り返したが、マウンドに上がっても、足がふわふわした感じだった。

 最初の打者を四球で歩かせると、そこから3連打を浴び、1点差に迫られた。なお、無死一、三塁。

 その時、後ろを振り返って、スコアボードを見たという。そして、深呼吸。いつもの自分に戻り、腹をくくった。

 次の打者は直球で遊ゴロ、その次の打者はカットボールで三振。一つずつアウトを積み重ねる。そして最後に投じた23球目には自信のある球を選んだ。「カットボール。毎日、練習してきたんで」。一ゴロに打ち取ると、拳を握りしめ、絶叫した。

 春の県大会は背番号10。投手としてチーム2番手だったが、今は「4番手だと思う」という。だが、そんなことは気にしない。「マウンドに上がったら、何番手とか関係ない。自分がエースだと思って投げています」。そんな強気もピンチをしのいだ要因だろう。

 さあ、甲子園。「出るのが目標じゃないので。日本一を狙います」。喜びをかみしめながら、力を込めた。(小田邦彦)