(24日、第107回全国高校野球選手権兵庫大会準々決勝 三田学園3―4小野) あとアウト二つをとれば勝てる――。その気…
(24日、第107回全国高校野球選手権兵庫大会準々決勝 三田学園3―4小野)
あとアウト二つをとれば勝てる――。その気持ちが手元を狂わせた。
三田学園のエース熊野慎投手(3年)は、試合の中で修正を続けていた。三回に2点適時打を打たれて逆転されると、「体の開きが早かった」とフォームを見直した。
直球とカットボールを丁寧に低めに投げ、その後は八回まで被安打1。「絶対に逆転してくれる」と援護を待ち続けた。
1点を追う九回表の攻撃中、熊野投手は、ベンチ前でキャッチボールをしながら逆転を祈っていた。仲間は2死に追い込まれながら、連続適時打で逆転した。
「最後まで絶対に抑えてやる」。1点リードで迎えた九回裏、熊野投手は覚悟を決めてマウンドに上がった。
投ゴロで1死を奪った直後、大きな歓声が球場に響いた。「勝利を意識してしまった」
二塁打と二つの四球で2死満塁のピンチになった。「力んでしまった」。続く打者には、自信のある直球を低めに投げた。打球は三塁手のグラブを弾き、逆転の2点適時打になった。三つ目のアウトを奪えないまま、試合が終わった。
試合後、熊野投手の目はどこか遠くを見ていた。「実感がわかない」と涙も出なかった。ただ投手を始めたのは2年生の秋からで、自分の成長を実感していた。「やりきれたかな」(原晟也)