(23日、第107回全国高校野球選手権青森大会準決勝 八戸学院光星11―1青森北) 最後の瞬間は次打者席で迎えた。青森…
(23日、第107回全国高校野球選手権青森大会準決勝 八戸学院光星11―1青森北)
最後の瞬間は次打者席で迎えた。青森北の工藤亘晴選手(3年)は「お父さんと甲子園に行けず、悔しいです」。目を真っ赤に腫らした。
父は同校の工藤公治監督。かつて大湊を指揮して、夏の大会で2009年、16年の2度決勝に進んだ。「下北から甲子園」にあと一歩だったが、手が届かなかった。8年前に青森北に赴任。むつ市に家族を残しての単身赴任だった。
亘晴選手は父を追いかけ、自宅から離れた青森北に進学した。「お父さんは甲子園に行ったことがない。尊敬するお父さんと一緒に野球をしたいと思いました」
高校に入り、再び、父と生活することに。やりにくい面もあった。
学校では「監督さん」と呼び、敬語で話した。家では「お父さん」呼ぶが、会話はほとんどなかった。
監督の息子だから試合に出られると思われるのは嫌だった。仲間に負けないように朝から練習した。周囲も認めるその努力で、この日もチーム唯一の打点をあげた。
監督と選手の関係だった2年半、最後に工藤監督は息子への思いを、涙をこらえながら語った。「努力は報われる。よく頑張った」。息子は父への思いをこう語った。「つらいこともあったけど、感謝しかないです」。
これからは普通の親子になる。「一緒に野球ができなくなるのは寂しいです」。亘晴選手は最後まで涙が止まらなかった。(小田邦彦)