全国高校総体(インターハイ=読売新聞社共催)の男子棒高跳び(25、26日)で、陸上部のない学校からの出場選手が優勝候補…

 全国高校総体(インターハイ=読売新聞社共催)の男子棒高跳び(25、26日)で、陸上部のない学校からの出場選手が優勝候補に挙がっている。阿南光(徳島県阿南市)の井上直哉選手(3年)。競技を始めた出身中学で練習に励み、今春、定年で教職を退いた恩師がボランティアでコーチを続ける。二人三脚で目指すのは総体制覇だ。(新谷諒真)

 放課後の校庭にコーチの声が響いていた。「風の方向を読んで。ほら今や」。10日夕、阿南市立 羽ノ浦(はのうら)中学校。力強く踏み切った井上選手は長いポール(棒)をしならせて体を真上に押し上げ、倒立の姿勢で高さ5メートル近くのバーを越えた。マットに着地後、撮影していたコーチの株木正彦さん(65)の元に駆け寄り、跳躍姿勢などをチェックした。

 棒高跳びと出会ったのは中学1年。「なんとなく」入った陸上部で株木さんに勧められた。棒高跳びの練習設備がある中学は珍しい。株木さんは入部者に等しく、「みっちりやれば全国を狙える」と声をかけてきたが、井上選手は他の生徒とは少し違った。信号機ほどの高さがあるバーにおじけづく様子もなく、跳躍を何度も繰り返した。

 「バーを跳び越えた時の心地よさがたまらない」と言う井上選手に対し、株木さんは「跳び続けるので、練習を止めないといけなかった」と苦笑する。井上選手は着実に力をつけ、中学3年で全国大会5位に入賞した。
 高校は、県北部の強豪校などの誘いもあったが地元に残った。通学には遠すぎたためだ。しかし、阿南光に陸上部はない。駄目元でコーチに「これからも教えてくれませんか」と頼んだ。株木さんは「その図太さがあれば、もっと上の舞台で戦えるな」と快諾。今春に退職したが、「外部コーチ」として引き続き、中学に赴いている。

 棒高跳びにはスピードに加え、体操選手のようなしなやかさが求められる。井上選手は、日本記録保持者の沢野大地さん(日大准教授)に助言を求めて助走を改良するなどし、記録を伸ばしている。昨秋の国民スポーツ大会(佐賀)は2年生ながら少年A(高校2、3年)で優勝。今年2月に20歳未満の全国大会を制した。今月中旬の記録会では昨年の総体優勝記録を15センチ上回る5メートル25の自己ベストを出した。

 総体は1年時は予選落ち。2年生は5位。今回は25日の予選に66人が出場し、26日の決勝は12~18人が進む。井上選手は「株木先生に恩返しをするためにも、優勝する」と必勝を誓っている。