(23日、第107回全国高校野球選手権香川大会準々決勝 尽誠学園1―0高松商) リードを許し、これ以上、得点を許せない…

 (23日、第107回全国高校野球選手権香川大会準々決勝 尽誠学園1―0高松商)

 リードを許し、これ以上、得点を許せない九回表のマウンドで、高松商の末包(すえかね)旬希投手(3年)は強気の直球で三振を奪って乗り切ると、雄たけびをあげてベンチに引き揚げた。勝負はその裏の攻撃に委ねられた。

 「攻撃につながるように、3年間のすべてをぶつけました」

 抜群の制球力を武器に、新チーム発足時から背負ったのはエースナンバーの「1」。しかし、早稲田実(東京)に敗れた今春の選抜大会以降、自分より球速のある別の投手らが調子を上げている様子に「自信を失うこともあった」。

 苦しい時期を支えてくれたのは、チームメートだった。

 4月のミーティング後、残った部員に自らの思いを打ち明けると、「試合をつくれるのはお前しかおらん。もっと自信を持って」と励まされた。

 「僕がエース、腐ってもだめだ」

 遠方からの通学を理由に、居残りでの自主練習は積極的にしてこなかったが、最後の夏に向けて練習量を増やした。ウェートトレーニングや体幹の強化を通じて、終盤まで安定した投球ができるようになった。

 試合は、相手投手を攻略できず、春夏連続の甲子園はかなわなかった。

 敗戦後は悔しくて涙が止まらなかった。「声をかけてくれたり、相手を研究してくれたり、最後まで気持ちよく投球できるよう支えてもらった」。最後は、仲間への感謝の気持ちも忘れなかった。

 長尾健司監督は「ベストピッチングだった」とたたえた。(木野村隆宏)